『あの頃ペニー・レインと』公開20周年、監督が明かす制作秘話

撮影現場でのクロウとペニー・レイン役のケイト・ハドソン(Photo by Neal Preston/Dreamworks pictures)



(スティーヴン・)スピルバーグはこう言ってくれたよ。「撮れる画は全部撮れ」ってね

ーロックをテーマにした映画は、大半が見当違いなものになりがちです。『あの頃ペニー・レインと』も、当初は懐疑的な見方が多かったのではないでしょうか。

クロウ 昔ピーター・フランプトンと一緒に、オーセンティックさを謳うロック映画をこき下ろしてたんだ。ある日彼に、1973年が舞台のロックをテーマにした青春映画を撮るから一緒にやろうって持ちかけると、彼はこう返してきた。「何だと? お前も魂を売っちまったのか! それが実現不可能なテーマだってことを、お前はよく知ってるはずだろ?」ってね。撮影中はその言葉が頭から離れなかったよ。

ー『あの頃ペニー・レインと』が公開された当時は、ティーンムービーと予算をかけたアクション映画が全盛でした。時代に逆行しているという実感はありましたか?

クロウ もちろんだよ。だから興収の面で成功しなかったことにも、特に驚きはしなかった。僕はあの機会を、『ザ・エージェント』の成功に対するご褒美みたいに捉えていたんだ。ドリームワークスを立ち上げたばかりだった(スティーヴン・)スピルバーグはこう言ってくれたよ。「撮れる画は全部撮れ」ってね。ブラッド・ピット(当初ラッセル・ハモンド役を演じる予定だった)の代役を探すことになった時も、特に圧力をかけられたりはしなかった。スピルバーグはこう言ってたよ。「真のスターは脚本だ」

ーローリングストーン誌の記者として取材をしていた頃、それらが映画の素材になると考えたことはありましたか?

クロウ まったくなかったね。だって当時は、ローリングストーン誌に寄稿すること自体が僕の夢だったから。今はサンディエゴに住んでた頃のことを題材にした自伝を書いてるから、当時の資料に目を通す機会が多いんだ。1973年付のスケジュール帳が出てきたんだけど、予定がぎっしり入ってる。「ジミー・ペイジと電話取材、ジョン・プライン、ボニー・レイット……」みたいなね。毎日大好きなアーティストにインタビューすることができて、お菓子屋さんではしゃぐ子供みたいな気分だったよ。

ーとはいえ、あなたはただ賞賛を送るだけじゃなく、手厳しい質問もしていますよね。

クロウ 相手がジョニ(・ミッチェル)のようなアーティストの場合は、敬意を示しつつも棘のある質問をした方がいいんだよ。彼女はそういう質問に答えるのを楽しんでた。君がそのことに気付いてくれてうれしいよ。僕はリサーチをすごく大切にしていたからね。最近はそうでもないけど、当時はその意義を軽視する音楽ジャーナリストがたくさんいたんだ。レッド・ツェッペリンをこき下ろした人は山ほどいた。ローリングストーンを含むロック専門誌を開けば、何も分かってないような輩を必ず目にしたよ。だから分厚い手帳に手書きでぎっしりと質問を書き込んでるようなジャーナリストに対しては、アーティストも「少なくとも、こいつは俺たちの音楽を知ってるんだな」って感じるんだ。

ー70年代に経験した出来事の中で、あまりに非現実的で映画には使えなかったことなどはありますか?

クロウ 何もかもが1973年に起きたわけじゃないよ。映画で描かれてるのは、あくまであの時代の縮図なんだ。僕は18歳になるまで免許を取らなかったんだけど、ローリングストーンとプレイボーイ用にボウイを取材した時には、彼が車であちこちに連れてってくれた。『ステイション・トゥ・ステイション』のレコーディングに一晩中立ち会ったこともあったよ。黄色のフォルクスワーゲンで、朝の渋滞に巻き込まれながら、僕を泊めてくれてた(フォトグラファーの)ニール・プレストンの家までよく送ってもらったよ。

窓の外では職場に向かう弁護士たちが行き交い、黄色の小さなVWのバグの運転席には髪を赤に染めたデヴィッド・ボウイが座ってる。ロックスター的なエピソードからは程遠いけど、非現実的な光景であることは確かさ。実際に目撃しない限り絶対に信じてもらえないようなことを、当時はたくさん経験したよ。

つい最近、ボウイにインタビューした時のテープを聴き直したんだ。ローリングストーン誌で彼の作曲プロセスを紹介するっていう企画で、彼はそのために1曲書き下ろしてくれてた。そのテープには、誰も聴いたことがない彼の曲が収録されてるんだよ。そういう経験は、僕にとってかけがえのない宝物さ。

ーあなたをモデルにしたウィリアム・ミラーという役柄と、実際のあなたの違いを挙げるとしたら?

クロウ 僕はどっちかというとお調子者だったってことかな。でも僕はミラー役を演じたパトリック(・フュジット)ほど、周囲の世界に対する思いを饒舌に表現することはできなかったね。パトリックは見事に演じたと思う。周囲に馴染もうと努力し、その世界に自分の居場所を見つける。ウィリアムはそういうキャラクターなんだ。

Translated by Masaaki Yoshida

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