『あの頃ペニー・レインと』公開20周年、監督が明かす制作秘話

撮影現場でのクロウとペニー・レイン役のケイト・ハドソン(Photo by Neal Preston/Dreamworks pictures)

公開から20周年を迎えた映画『あの頃ペニー・レインと』。監督のキャメロン・クロウが自ら語る制作秘話、そして今なお色褪せないジャーナリズムと音楽の力を伝えるメッセージとは?

・ゼロ年代屈指の名作となった理由

1996年の作品『ザ・エージェント』が興行収入2億7000万ドルを記録し、さらにアカデミー賞5部門にノミネートされたことで、脚本と監督の両方を手がけたキャメロン・クロウは、かつてなくパーソナルな映画を撮るだけの自由を手にした。彼が描こうとしたのは、10代の頃にローリングストーン誌の記者としてデヴィッド・ボウイやレッド・ツェッペリン、ジョニ・ミッチェル等にインタビューを行った、70年代の体験に基づいた半自伝的な物語だった。「『ザ・エージェント』の成功によって信用を得たからね」。ロサンゼルスの自宅から電話取材に応じてくれたクロウはそう話す。「その時こう思ったんだ。『これを利用しない手はない。今を逃したら、この映画を撮るチャンスはもう二度とやってこないだろう。ものすごくパーソナルなこの作品を、できるだけお金をかけずに撮ろう』」

【写真ギャラリー】故フィリップ・シーモア・ホフマンが使用した椅子の背もたれなど、監督が所有する秘蔵コレクション

2000年に劇場公開された『あの頃ペニー・レインと』は評論家の間で高く評価され、アカデミー賞4部門ノミネートを果たしたが、興行収入の面では失敗に終わった。「『エクソシスト』の再上映と被っちゃったんだ」。クロウはそう話す。「1973年の呪縛からは逃れられないんだって、改めて思い知らされた気分だったよ」。しかし公開から20年が経った現在、『あの頃ペニー・レインと』は単なるカルト・クラシックではなく、ゼロ年代屈指の名作として広く愛されている。「僕らは弱者の立場にあったけど、長い時間をかけて支持者を増やしていった」。彼はそう話す。「今になって、あの映画はすごく人気を集めてるんだよ」



クロウは現在、同作のブロードウェイ版の制作に取り組んでいる。公開20周年を迎えた『あの頃ペニー・レインと』について、クロウはノスタルジーとプライドの入り交じった思いを抱いているという。「動機はすごくシンプルだった。『ジャーナリズムについての映画を撮る機会なんて、そう簡単には巡ってこない。自分を支えてくれた人々や、音楽を愛する全ての人々のために道を切り拓いた者たちに、今こそエールを送りたい』。そう思ったんだ。あの映画を観た人たちは、音楽を愛する気持ちを再確認できたと思う。僕はそれを何よりも誇りに感じているんだ」

Translated by Masaaki Yoshida

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE