バイデン勝利により音楽業界の資産売却が活発になる理由

大物スターや音楽エグゼクティブたちがバイデン氏・ハリス氏の勝利を祝う一方、彼らは両氏の税制案が現在の著作権取得フィーバーに与え得る影響にも注目している。

ジョー・バイデン氏が次期米大統領、カマラ・ハリス氏が次期副大統領になったことに対し、音楽業界はほぼ満場一致で喜んでいるようだ。

米現地時間11月8日、ビヨンセはアメリカの新たなリーダーたちに祝福のメッセージを送った。アリアナ・グランデはその数日前、11月3日は「ジョー・バイデンとカマラ・ハリスに投票するのに最高の日」とSNSに投稿した。テイラー・スウィフトは、かねてからバイデン支持を公言している。それに加え、スティーヴィー・ワンダーからビリー・アイリッシュといったありとあらゆる著名人が最終的にドナルド・トランプ大統領を破ったバイデン氏に対する支持を掲げ、大統領選挙に向けて活動した。

こうした舞台裏で、ロサンゼルスとニューヨークに拠点を置く商業音楽業界のリーダーたちも超メジャーなポップアイコンたち同様、大統領選の結果に概して満足していたようだ。ここ数週にわたって筆者が話したシニア・エグゼクティブたちの反応から、筆者はこう判断するにいたった。

その一方、バイデン氏が大統領に就任するにあたり、音楽業界にとってあまり喜ばしくないことがひとつある——それにより、今後およそ70日にわたって高額の取引が次々と行われるかもしれないのだ。

筆者が担当している本誌のコラムの読者は、カタログ音源権取得をめぐる昨今のブームに精通しているだろう。Hipgnosis Songs Fund、Round Hill Music、Concord、Primary Waveやその他の音楽会社は、過去2年にわたって数十億ドルの買収資金を調達し、音楽業界では前例のない金額を音楽の著作権の購入に費やしてきた。これはつまり、大勢のプロのソングライターとプロデューサーがカタログ音源を売却し、前払いとして高額の小切手を手に入れる代わり、未来のロイヤリティ(著作権使用料)を放棄したことを意味する。こうした一連の売却行為の要因として、あまり多く語られていないことがひとつある。大金と高額な小切手に加え、そこには税の優遇措置がある。

カタログ音源をファンドあるいは企業に売却する際、ソングライターは自らが所有する資産を金銭的価値に変換する。それにより、資産に対するキャピタルゲイン(訳注:保有している資産を売却することで得られる売買差益のことで、資本利得とも言う)税を1回支払わなければならない。トランプ政権下では、それは販売額のおよそ20%を(長期キャピタルゲイン・アセットとして)米政府に支払うことを意味していた。

>>関連記事:米投資会社がテイラー・スウィフトの原盤権を約312億円で買収した理由

年間ロイヤリティには、別の税金が課せられる。そこには、勝ち組アーティストあるいはソングライター個人のストラクチャーが考慮されるため、およそ20%という割合より高い課税率になる場合もある。これはとりわけ、高収入のスターの個人所得税債務としてロイヤリティ収入が計算された場合に当てはまる(現時点で米国の所得税の最高所得層の税率は37%)。

Translated by Shoko Natori

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