心地良いサウンドを手軽に愉しめる逸品 Apple HomePod mini レビュー

11月16日に発売されたAppleの新しいスマートホームスピーカー「HomePod mini」(Photo by Brandt Ranj)


シンプルで親しみやすいデザイン

製品名にふさわしく、HomePod miniは見た目も使い心地もAppleのフルサイズのスマートスピーカーのミニチュア版のようだ。高さは84.3ミリで、両サイドが少し膨らんだ丸い形をしている。スピーカーの上と下は完全にフラットで、見た目は対称的だ。家電らしくない外観の製品が好みなら、きっとHomePod miniの美学を気に入るだろう。

外観は地味かもしれないが、メッシュ素材のカバーの下に潜むHomePod miniのオーディオギアはかなり複雑だ。Appleは、この新作スピーカーにフルレンジドライバと、さまざまな方向に音を届けるデュアルパッシブラジエータを搭載した。「アコースティックウェーブガイド」というコンポーネントがスピーカーの下の部分から音を伝達し、360度のオーディオエフェクトを生み出す。4つのマイクのアレイは、大音量で音楽を聴いていてもSiriに対応できるよう設置されている。

HomePod miniは、Apple Watchシリーズ5でデビューした、カスタムデザインの「S5チップ」を搭載している。このチップのおかげで、HomePod miniはユーザーが聴いている曲に応じて音を調整し、最適化することができるのだ。フォークソングとハードロックの聴こえ方は変わるだろう。というのも、S5チップは両方を最高のサウンドにするためにあるのだから。

手堅い選択

説明だけでもHomePod miniのオーディオハードウェアが優れていることが伝わってくるが、筆者は実際にスピーカーの音を試してもっと嬉しくなってしまった。Appleは、初代HomePodで到達した高いレベルのオーディオクオリティを維持していることはもちろん、それを1万800円という価格で実現したのだ。誤解しないでほしいのだが、フルサイズのHomePodのほうがサウンド的にははるかに優れている。だが、HomePodの価格は3万2800円(税別)だ。1万円代のHomePod miniは、独自のカテゴリーの製品といえるだろう。

筆者は、メインスピーカーとしてHomePod miniを2週間使用し、使うごとに感心させられた。ローカルのミュージックライブラリのトラック、Apple Musicでストリーミングした楽曲、TIDAL(訳注:ノルウェー発祥の音楽ストリーミングサービス)から入手したフルクオリティのオーディオファイル——筆者は、これらのポイントをもとにHomePod miniを検証した。ほとんどの楽曲は、「AirPlay(Appleのワイヤレス再生機能)」を介してiPhoneからストリーミングされたが、直接Siriにリクエストしていくつかの楽曲も再生してもらった。オーディオ好きであれ、気軽に音楽を楽しみたいリスナーであれ、HomePod miniのサウンドには両者を魅了する多くの点があるというのが筆者の結論だ。

さらにHomePod miniは、ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズの「Dream On」のしんみりとした雰囲気を捉えることに成功し、とりわけボーカル部分を見事に強調した。ジョニ・ミッチェルの「Willy」のピアノの調べの自然さにも感動させられた。それだけでなく、ザ・フレーミング・リップスの「Ego Tripping at the Gates of Hell」のような高密度の楽曲も驚くべき明瞭さで再生してくれた。同楽曲のミックスの奥底に潜むシンセサイザーのような音は聞き取りにくかったものの、全体的にHomePod miniの仕事ぶりは見事だった。

ミッドレンジやハイの音域をモヤッとさせずに小型スピーカーがディープなベースを再現するのは難しいだろうが、HomePod miniではそんなトラブルはなかった。筆者がHomePod miniで初めて聴いた楽曲のひとつはショーン・メンデスとカミラ・カベロの「Senorita」で、同楽曲はベースとギターの独特な相互作用で始まる。いともたやすく両方の楽器の要素をはっきりと忠実に聴くことができた。

ワイヤレススピーカーの欠点のひとつは、こうした製品のほとんどがモノラル再生である点にある。要するに、左右のチャンネルからの楽器の音が「折りたたまれた」状態になり、楽曲によっては不自然に聴こえたり、楽曲に合っていないように聴こえたりするのだ。HomePod miniのオーディオシステムは、こうしたオーディオ異常を巧みに削減してくれるが、これはよくある問題だ。ありがたいことにAppleは、2台のHomePod miniをペアリングすることで正真正銘のステレオ再生による音楽が楽しめるという解決策を提供してくれた。

2台のHomePod miniによってステレオ再生が可能になると、この製品は完全にワイヤレスなオーディオシステムを提供してくれるAppleの名品、AirPods Proに限りなく近いスピーカーになる。2台のHomePod miniをペアリングしてステレオ再生することにより、「Ego Tripping at the Gates of Hell」のサウンドは完璧なものになった。すべての要素が再現され、ひとえに最高のサウンドを提供してくれたのだ。

もし、あなたが音楽をストリーミングでしか聴かないなら、2台のHomePod miniは従来のホームステレオの代わりに十分なり得ると言い切ってもいいだろう。レコードプレーヤーで音楽を聴く、あるいはiPhoneやMacでは聴きたいトラックが入手できない場合は、従来のオーディオスピーカーや高性能なオーディオ機器を使い続けるのが無難だ。

それでも筆者は、コンパクトなパッケージで最高品質の音質を追求していたAppleに称賛を送りたい。HomePod miniは、まさにその成果なのだから。

Translated by Shoko Natori

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