ー時間の経過とともに、BTSの楽曲のなかで「成功」の意味が変化していくのが見事です。その代表例は、個人的には歌詞の使い方だと思います。「I want a big house, big cars, big rings(大きな家と車と指輪がほしい)」という歌詞は、デビュー曲「NO MORE DREAM」、『MAP OF THE SOUL : PERSONA』(2019)の収録曲「HOME」、『MAP OF THE SOUL : 7』(2020)の収録曲「Interlude : Shadow」など、数年にわたってBTSの楽曲で使われていますが、それぞれ意味が違います。それに加え、歌詞を変えて「I want」の部分を省略した別バージョンの「NO MORE DREAM」をライブで披露したこともあります。デビュー当時と比べて、成功の意味が変わってきているのでしょうか?J-HOPE:若い頃は、デビューこそが成功だと思っていた時期もあった。自分が「成功」だと信じていたことを初めて経験したとき、何かが欠けていることに気づいた。それが僕の学びの旅の始まりだったんだ。成功について語るのはちょっと恥ずかしいよ。だって、僕はまだ学びの途中だから。成功の意味や基準は、人によってさまざまだ。自分で定めたレベルの成功を手に入れるために全力で努力するって考えることで心が休まる。これがいまの僕にとっての成功なんだ。
ーそれに付随してJ-HOPEに質問です。2018年のミックステープ『Hope World』(2018)に収録されている「Airplane」は、子どもの頃から夢見た人生を生きていることに気づいた瞬間を描いた楽曲だと前に語っています。すべてが非現実的に思えるような、そんな瞬間をいまも経験することはありますか?J-HOPE:楽しいという純粋な気持ちから生まれた僕らの歌とダンスが世界中にここまでインパクトを与えたなんて、いまでも信じられないよ。誰もこんなことになるなんて思いもしなかったから、なおさら感慨深いよね。BTSがBillboard Hot 100のトップだなんて、いまだに信じられない。
ー『DARK & WILD』(2014)であれ、『花様年華』シリーズであれ、初期のアルバムを手がけていた頃のあなたは、思春期の青年でした。一人前の大人として成功したいま、こうした作品を振り返ってみて、若者が音楽から感じ取るべきものに対する見方は変化しましたか?RM:もっと若い頃は、悲しみに対処するには悲しみしかないと思っていたけど、年を重ねたいまは、必ずしもそうではないことに気づいた。僕らの人生の栄養素として喜びと悲しみ、そして光と闇の調和が必要なんだ。
ー『MAP OF THE SOUL : 7』は、人間の心を形成するさまざまな要素を取り扱うと同時に、名声を築いてゆくBTSの変化とも深く結びついています。BTSのパーソナルな面を世界のオーディエンスにさらけ出すのは、大変でしたか?J-HOPE:このアルバムは、7人のメンバーが一緒に歩んできた7年間を振り返っているんだ。いまの僕らを形作ったストーリーを語ったり、率直な方法で僕らの正直な想いを表現したりしている。例えるなら、過去7年間の壮大で緻密な日記を紐解くようなものさ。このアルバムは、ありのままの僕らをさらけ出している——こうした方法で自分たちを表現できることを誇らしく感じると同時に、とても恵まれていると思ったよ。
「若い頃は、デビューこそが成功だと思っていた時期もあった。自分が「成功」だと信じていたことを初めて経験したとき、何かが欠けていることに気づいた。それが僕の学びの旅の始まりだったんだ」——J-HOPE。Photograph courtesy of Big Hit Entertainmentー『MAP OF THE SOUL : 7』に収録されている「Black Swan」では、芸術への愛を失う恐怖が描かれています。これは、実体験にインスパイアされたものですか? それとも、未来の漠とした恐怖に関するものでしょうか?JIMIN:以前は、自分のしていることに対する純粋な熱意が消え、タイトなスケジュールや責任に疲れ果てたあげく、いつかは「仕事」としてしか捉えられなくなることに恐怖を感じていたんだ。
>>関連記事:BTSが語る、2019年という歴史的な1年と夢のコラボレーションー『MAP OF THE SOUL : 7』には、とりわけ『Skool Luv Affair』(2014)、『WINGS』(2016)、『O!RUL8,2?』(2013)といったアルバムや、「Sea」や「SAVE ME」などの過去の楽曲を想起させる素晴らしいトラックがたくさんあります。『MAP OF THE SOUL : 7』が2020年にふさわしいアルバムとなり、2020年にしかるべき形で原点に戻った理由は何だと思いますか?JIN:2020年はBTSのデビュー7周年だから、アルバム制作中は一緒に過ごした7年間を振り返ることができた。思い出をたどり、このプロジェクトには「リブート」というコンセプトが自然としっくりくるように思えたんだ。