キース・リチャーズが語るロックンロールの真髄、最高のリフを作る秘訣、BLM運動への共感

キース・リチャーズ(Photo by Paul Natkin)

ローリング・ストーンズの最新アルバムを鋭意制作中のキース・リチャーズ。1991年発表のライブ・アルバム『Live at the Hollywood Palladium』のボックスセットを11月13日にリリースした彼が、エクスペンシヴ・ワイノーズとの思い出、チャック・ベリー、ジェームス・ブラウンとBLM運動、そしてロックンロールから学んだ人生観を語る。

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9月の終わりにキース・リチャーズは半年ぶりに仕事復帰した。マンハッタンにあるGermano Studiosに到着した彼は体温が97.8°F(=36.5℃)だと自慢気に言う(「寒くて凍えてるよ」と)。このスタジオでローリング・ストーンズの次回作の制作が再開されたのである。「昨日このスタジオにやって来るときに、この部屋に3月初めに入ったことを思い出した。ここでいつも通りに作業を進めていたのに、翌日に面倒な状況になったわけだ」と言って彼は大笑いする。「そして昨日、デジャヴみたいな感覚を覚えたよ。今は仕事ができてとても嬉しい。今、世間には大して仕事がないだろう?」と続ける。

今年の初めに、ストーンズは慌ただしく「Living in a Ghost Town」をリリースした。ムーディーでソウルフルなロックナンバーで、ロックダウンで生き残る内容の歌だ。新作アルバム用にこの曲をレコーディング済みだったが、この楽曲を先行リリースした理由を「あの状況にピッタリだと思ったんだよ」とキースが説明する。キースはアメリカ在住だが、ミック・ジャガーはヨーロッパに滞在していたため、互いに曲のアイデアをやり取りしながらリモート作業で曲作りを進めたと言う。そして「大西洋を挟んで連絡を取り合いながらワクチンの完成を待っているよ」と言ってすぐに「何千曲もできあがっているから本当に忙しくてね」と冗談を飛ばす。

最近、キースの時間を占領しているもう一つのプロジェクトが、ボックスセット『Live at the Hollywood Palladium』のリリースだ。これはソロとしてのデビュー・アルバム『Talk is Cheap』リリース後、1988年にバックバンドのジ・エクスペンシヴ・ワイノーズ(X-Pensive ワイノーズ)と行った短いコンサートツアーの後半のライブをコンパイルしたライブ・アルバムである。当時、ストーンズは解散の瀬戸際にいた。1986年にスタジオ・アルバム『Dirty Work』をリリースしたものの、このアルバムでのツアーは行わず、ミック・ジャガーはすぐさまスタジオに戻り、自身のソロ2枚目となる『Primitive Cool』を制作し、そそくさとソロツアーに出てしまった。さらにメディアを通して、ストーンズとしてツアーをしたかったキースとの舌戦が繰り広げられた。

その後、キースはドラマーのスティーヴ・ジョーダンとつながり、『Talk is Cheap』が完成し、このアルバム収録の2曲がメインストリーム・ロックのラジオ局でヒットした。それがアップビートな「Take It So Hard」と、ジャガーに向けたと思しきムーディーな別れの曲「You Don’t Move Me」だ。エクスペンシヴ・ワイノーズとツアーに出たキースは、ライブでこのアルバム収録曲を全曲披露しつつ、キースが歌ったストーンズの楽曲もセットリストに入れた。『Live at the Hollywood Palladium』のハイライトは、『Talk is Cheap』収録の「Take It So Hard」と「Locked Away」、さらに『Dirty Works』収録のレゲエナンバー「Too Rude」、キースのトレードマーク的楽曲「Happy」の拡張ジャム、サラ・ダッシュが歌う「Time Is On My Side」だ。ダッシュはパティ・ラベルのグループのブルーベルズの一員だった。今回のリイシュー盤にはオリジナルLPに収録されなかった3曲が追加されている。ソロ曲は「You Don’t Move Me」。ストーンズの曲は2曲で、『Tattoo You』収録の「Little T&A」のハードロックアレンジ版と、1963年のレノン&マッカートニー作の2枚目のシングル「I Wanna Be Your Man」だ。この曲のワイノーズ版は観客と合唱できるようになっていた。

キースはこのコンサートとあの頃の人生を振り返ったとき、誇りを感じると言う。「年寄りキースの心の特別な場所をワイノーズが占拠している。あの頃、どんなふうにあのアルバムをレコーディングしたものかと考えあぐねていた。突然『あれがあるじゃないか』と閃いて、俺は本当に嬉しかったよ。最高のバンドが弾いてくれているのさ」と。

Translated by Miki Nakayama

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