AC/DC独占インタビュー 復活までの道のり、マルコム・ヤングとの絆、永遠のロック魂

ブライアン・ジョンソンの苦悩(1)

『パワーアップ』への道のりは、『バック・イン・ブラック』以降にAC/DCが経験した中で最も厳しいものだった。『バック・イン・ブラック』は、当時シンガーだったボン・スコットの死の直後から制作が開始された。アルバムのレコーディング直前に加入したブライアン・ジョンソンは、以降36年に渡ってバンドのシンガーとしてステージに立ち続けた。



ところが『ロック・オア・バスト』ツアー(2015〜16年)中に、聴力が急激に悪化した。

「とても深刻な状況だった」とジョンソンは、英国からの電話インタビューで証言した。「ギターの音がほとんど聞こえなくなっていた。難聴の中でも酷い部類だった。体が覚えている口の形とマッスルメモリーを駆使してどうにか歌えている状態だった。バンドのシンガーとしてオーディエンスの前でパフォーマンスを続けるにはとても厳しい状況で、バンドにとっても最悪だった。ステージに立って何もできないことほど最悪なことはない」

ファンのほとんどは、何が起きているか理解できなかっただろう。しかし間近でジョンソンの姿を見ているメンバーにとっては、辛い状況だった。「彼はイヤモニを外して頭を激しく振っていた」とウィリアムズが、ノースカロライナにある自宅からの電話で語った。「彼は音程も取れなかった。彼にとって本当に厳しい時期だったろう」



バンドはツアーの残りの日程をどうにか乗り切ろうとしたが、ジョンソンにドクターストップがかかってしまった。「医者が言うんだ。“聞こえないものは聞こえないんだよ”ってね」と、ジョンソンは言う。「クリフとアンガスは、俺の耳をこれ以上悪化させたくないと判断した。死を宣告された訳ではないが、最悪だった」

ジョンソンの活動の継続が難しい状況になった時、残りのメンバーは厳しい選択を迫られることとなった。「ブライアンには、完全に聴力を失うリスクがあった」とアンガス・ヤングは言う。「状況を公表して何らかのメッセージを出すまでに、2、3日しか猶予がなかった。間際まで隠してファンをがっかりさせたくはなかった」

Translated by Smokva Tokyo

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