「新世代UKジャズ」について絶対知っておくべき8つのポイント

柳樂光隆が監修した「UKジャズ・シーン相関図」


Column 4
UKジャズとアメリカ/アフリカの相互関係

『Blue Note Re:Imagined』にオーストラリア出身のジョーダン・ラカイやノルウェー発のネオソウル・バンドことフィア(Fieh)が抜擢され、全英チャート1位も成し遂げたボンベイ・バイシクル・クラブのフロントマン、ジャック・ステッドマンによるミスター・ジュークスや、デトロイト・テクノの重鎮ことカール・クレイグともコラボしてきたイシュマエル・アンサンブルも参加しているように、今日のUKジャズは国境やジャンルを超えてミュージシャンが集い、様々なフィールドに相互作用をもたらしている。


(左上から時計回りに)ジョーダン・ラカイ、フィア、イシュマエル・アンサンブル、ミスター・ジュークス








マカヤ・マクレイヴン(Photo by Eddie Otchere)

アメリカでこの動きにいち早く反応したのが、鬼才ドラマーのマカヤ・マクレイヴン。ジェフ・パーカーなど共に新たな隆盛を見せるシカゴシーンの最重要人物である彼は、2018年のミックステープ『Where We Come From (Chicago × London Mixtape)』でヌバイア、ジョー・アーモン・ジョーンズ、テオン・クロス、カマール・ウィリアムズと行ったセッションを再構築したあと、2018年の傑作アルバム『Universal Being』でも、「ジャズの今」を象徴する都市としてNY、LA、シカゴとともにロンドンへと渡り、シャバカ、ヌバイア、ダニエル・カシミール、アシュリー・ヘンリーとの演奏を録音/リエディット。2019年にはエマ=ジーン・サックレイとスプリット・シングル「Too Shy / Run Dem」をリリースし、ヌバイア・ガルシア最新作『Source』の楽曲をリミックスするなど、活発な交流を見せている。





また、モーゼス・サムニーが2020年に発表し、高く評価された2ndアルバム『græ』では、ジェイムス・ブレイクやワンオートリックス・ポイント・ネヴァーことダニエル・ロパティン、サンダーキャットなどに並んで、シャバカとヌバイア(ここではフルートを担当)が参加。その逆で、カマール・ウィリアムス『Wu Hen』にはLAを拠点とするミゲル・アトウッド・ファーガソンや、ドラマーのグレッグ・ポール(ソランジュやジェイ・Zといった大物を支えるジャズ・コレクティヴ「カタリスト」に所属)が参加している。このように、今後もUKとアメリカの交流が化学反応を生み出すに違いない。





トム・スキナー

もう一つ注目しておきたいのがアフリカシーンとの繋がり。TWの門下生で、サンズ・オブ・ケメットやメルト・ユアセルフ・ダウンでドラムを担当し、同時にハロー・スキニー名義でエレクトロニックミュージックも制作してきた(2017年作『 Watermelon Sun』はBrownswoodよりリリース)トム・スキナーは、ゼロ7やフローティング・ポインツなどとの共演を通じてUKのクラブシーンで活躍してきた一方で、エチオピア・ジャズのレジェンドであるムラトゥ・アスタトゥケのバンドにも起用されてきた。実はシャバカもムラトゥと共演歴があり、エチオピア音楽からの影響を幾度となく語っている。




さらに、シャバカは南アフリカ出身のフリージャズ系ドラマーのルイス・モホロや、ナイジェリア音楽の大家であるキング・サニー・アデ、ナイジェリア産アフロビートの巨匠オーランド・ジュリアスとも共演してきた。彼が率いるシャバカ・アンド・ジ・アンセスターズでは、ドラマーのトゥミ・モゴロシやサックス奏者のムトゥンジ・ムヴブといったバンドメンバーや、2020年にブルーノートからリーダー作『Modes of Communication: Letters from the Underworlds』を発表したピアニストのンドゥドゥーゾ・マカティニ、女性ピアニストのタンディ・ントゥリなど元メンバーやゲスト陣も含めて、南アフリカの実力派ミュージシャンが参加している。


2016年、南アフリカのヨハネスブルグで演奏するシャバカ・アンド・ジ・アンセスターズ




この流れとも呼応するように、ニンジャ・チューンを主宰するコールドカットが始動させたプロジェクトがケレケトラ!だ。2020年に発表させたセルフタイトル作では、シャバカやジョー・アーモン・ジョーンズ、テンダーロニアスなどUK勢が、アフロビートの創始者ことトニー・アレン(2020年死去)、フェラ・クティに仕えた鍵盤奏者のデレ・ソシミを含む南アフリカのミュージシャンや、USアフロビートの代表格であるアンティバラスなどと実り多きコラボを見せている。さらにジョー・アーモン・ジョーンズは、南アフリカを代表するトランペッターのヒュー・マセケラ(2018年死去)とトニー・アレンの遺作となったコラボ作『Rejoice』で、ムタレ・チャシ(ココロコ)とともに大きく貢献している。




南アフリカはもともとイギリスの植民地だったこともあり、昔から南アフリカ出身のミュージシャンがUKのジャズシーンで活躍してきた。さらに、サンズ・オブ・ケメットやエズラ・コレクティヴ、もしくはココロコやモーゼス・ボイドの音楽性にも明らかなように、今日のUKジャズシーンはアフロビートを貪欲に取り入れ、様々な要素をミックスさせながら進化させてきた。シャバカやジョーはそんな歴史も踏まえつつ、UKと南アフリカのコネクションをもう一度深めながら新しい関係を作り出そうとしているのだろう。

最後に、リーズとロンドンを拠点にする大所帯ジャズ・コレクティヴ、ヌビヤン・ツイストにも注目しておきたい。2019年発表の2ndアルバム『Jungle Run』では、ムラトゥ・アスタトゥケとトニー・アレンをゲストに迎えて、アフロジャズとブラジル音楽、エレクトロニスが融合した刺激的なサウンドを展開されている。そして、ベナン共和国の大御所シンガー・ソングライター、アンジェリーク・キジョーによる最新作『Celia』(2019年)に、トニー・アレンやミシェル・ンデゲオチェロなどと並んで、シャバカがサンズ・オブ・ケメットのメンバーを率いて参加していることも付け加えておこう。


RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE