「新世代UKジャズ」について絶対知っておくべき8つのポイント

柳樂光隆が監修した「UKジャズ・シーン相関図」


4.音楽的特徴は「ハイブリッド」

コートニー・パインやギャリー・クロスビー、クリーブランド・ワトキスといった旧世代のジャズミュージシャンたちは、ファンクやレゲエ、アフリカ音楽、ドラムンベース、ラガ・ジャングルなど、イギリスのDJカルチャー由来の音楽から自分たちのルーツ音楽まで融合させてきた。彼らの子どもたちとも言うべきシャバカやヌバイア、エズラ・コレクティヴ、モーゼス・ボイド、テオン・クロスといった面々は、そういった伝統やルーツを継承しながら、レゲエやダブ、アフロビート、ダブステップやグライムなど、現在のイギリスに根付くサウンドをジャズと融合させている。

その傾向はTomorrow’s Warriors門下生に限らず、ユセフ・デイズ、エマ・ジーン・サックレイなどシーン全域で広く見られるもので、今やUKジャズのカラーとしても認識されつつある。実際、彼らの音楽はジャズの範疇を超えて、幅広いプレイリストで引っ張りだこになっている状況だ。


(左)テンダーロニアス:ヘンリー・ウー(カマール・ウィリアムス)、レジナルド・オマス・マモード4世、モー・カラーズなどを擁するサウスロンドンのクルー&レーベル「22a Music」のリーダー。フルート/サックス奏者のジャズマンであると同時に、プロデューサーとしてトラック制作も行う。
(右)フローティング・ポインツ:マンチェスターのDJ/プロデューサー、サミュエル・シェパードのメイン・プロジェクト。エレクトロニック・ミュージックの第一人者でありながらジャズにもたびたび接近し、2015年のデビューアルバム『Elaenia』にはドラマーのトム・スキナーも参加。ヌバイアの講師を務めたこともあり、彼女に電子楽器のノウハウを伝授した。(Photo by Dan Medhurst)




そんなハイブリッド志向のジャズ・ミュージシャンたちが、テンダーロニアスが主宰する22a、フローティング・ポインツが主宰するEglo Records、カマール・ウィリアムスが主宰するBlack Focusなど、DJカルチャー/クラブミュージック側からジャズと接近してきたレーベルとも交流し、同じイベントに出演したりしている。そんな土壌があるからこそ、トム・ミッシュとユセフ・デイズがコラボ作『What Kinda Music』を発表したり、シャバカ、ヌバイア、Wu-Lu、マックスウェル・オーウィンなど総勢18組のビートメイカーとジャズミュージシャンのコラボを集めた『Untitled』のような作品が生まれたりするわけだ。

シャバカ・ハッチングスはエレクトロニックミュージック系の音楽家と組んだコメット・イズ・カミング、南アフリカのミュージシャンと結成したシャバカ・アンド・ジ・アンセスターズ、カリブやアフリカの音楽を消化したサンズ・オブ・ケメットの3組を並行して運営し、モーゼス・ボイドはアフリカやカリブ音楽、グライムやダブステップを、生演奏とプロダクションが入り混じる独自のスタイルで融合させている。それらを聴いていると、80年代以降にイギリスで起こったDJカルチャーとジャズの関係性が受け継がれているだけでなく、当時よりもはるかに高い精度でジャンルの交配が行われていること、それらが昔より優れたテクニックで演奏され、多彩な形でアウトプットされていることがよくわかる。UKジャズが全く新しい次元にまで更新されていることは明白だ。






2019年、グラストンベリー・フェスに出演したコメット・イズ・カミングのライブ映像

21世紀以降、アメリカではロバート・グラスパーらの活躍によってジャズがハイブリッドな進化を遂げ、大きな支持を集めてきた。同時にジャズは世界中でそれぞれの地域の特性を活かし、歴史を受け継ぎながら独自の進化を遂げている。『Blue Note Re:Imagined』は、今日のイギリスにおける活況を鮮やかに切り取ったドキュメントのような作品でもある。ジャズを軸とした音楽の多種多様なバリエーションを、まずはここから楽しむといいだろう。

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