cero、Tempalay、D.A.N.が三者三様に体現した音楽のアプローチ

新しい「扉」を開けたD.A.N.

この日のトリを務めたD.A.N.は結成当初から「3ピース」で固定されつつ、初期から小林うてなをサポートに迎えていたが、一時期の3人のみでのライブ活動を経て、再び小林が加わり、さらには音源には初期から関わっていたFLATPLAYのSohei Shinozakiがライブにも参加することで、明確にネクストステージへと突入している。

市川仁也によるアップライトベースの弓弾きから始まり、シンセのリフレインがトランシーなムードを作り出す「Aechmea」、ピアノを軸としたドラマ性の高い曲調と、ジワジワと高揚していく展開がポストロック的な「Bend」という今年リリースされた楽曲は、どちらもこれまでのD.A.N.にはなかった作風。Shinozakiは脇に置かれたギターをほぼ弾かず、自由度の高い役割を与えられている印象で、彼の存在が内側からメンバーを刺激し、ライブの完成度をもう一段階上へと引き上げる可能性を感じた。

櫻木が「レゲトンって感じ」と紹介した新曲「Floating in space」は、小林のスティールパンをイントロに、Shinozakiのパッドと、川上輝の跳ねたビートが絡む前半こそ確かにレゲトンっぽさがあるものの、小林のヴォーカルパートを挟んで、最後はストレートな16の刻みに変化していくというこれまた難曲で、現在のD.A.N.が新しい扉を開けまくっていることが伝わってくる。ラストは「SSWB」から「Borderland」というより直接的にフィジカルを感じさせる曲を続け、多くのオーディエンスが椅子から立って体を揺らし、一曲ごとだけでなく、一ステージを使ってミニマルに内側から高揚させて、ピークタイムを迎えるD.A.N.の真骨頂を感じさせる光景だった。


D.A.N.(Photo by Azusa Takada)

そもそも伝統的な3ピース(ではなくてもいいが)のロックバンドは、コール&レスポンスをしたり、直接的に「踊れ―!」と煽ったりして、オーディエンスを盛り上げることがパフォーマンスの要素として大きく、それができない現状では、ライブの魅力が半減してしまう印象が否めない。しかし、この日の3組はもともとそういったタイプではなく、あくまで音でコミュニケーションを取って、より主体的に、より自由に楽しんでもらうことを前提としている。ダンスミュージックを背景に持つD.A.N.やceroは明確にその意識があるし、Tempalayにしても感覚的な部分を共有していたはずだ。そんな意味においても、この3組はやはり2020年の現状を体現する組み合わせだったように思う。

【画像】cero、Tempalay、D.A.N.が出演した「第15回渋谷音楽祭2020 presents“CUT IN”」の様子

「第15回渋谷音楽祭2020 presents“CUT IN”」
Streaming+配信チケットは12日21時まで販売中
https://eplus.jp/shibuyamusicscramble-cut-in-st/
※ご購入の際に関しては、専用URLでの詳細をご確認の上ご購入いただきますようお願い申し上げます。

Rolling Stone Japan

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