佐野元春が40年の歩みを語る 言葉・メロディ・ビートへの意識と挑戦

佐野元春(Courtesy of 佐野元春)



THE COYOTE BANDで見つけたロックンロールの形

―『THE ESSENTIAL TRACKS MOTOHARU SANO & THE COYOTE BAND 2005 – 2020』は、年代順ではない構成をされています。

佐野:EPICソニーを離れて、自分のレーベル、デイジーミュージックを立ち上げた。新しいバンド、THE COYOTE BANDを結成した。『THE ESSENTIAL TRACKS MOTOHARU SANO & THE COYOTE BAND 2005 – 2020』。このベストは、コヨーテバンドの15年間の記録だ。

―THE COYOTE BAND結成以降の勢いはすごいですね。

佐野:もちろんファンの支援があってのこと。活動は充実しているよ。

―意図的に若いメンバーを集めたんですか?

佐野:歳は関係ない。一緒にやりたかったメンバーだ。彼らとロックンロールしたい。すべてはそこから始まった。

―はい。

佐野:アルバム『COYOTE』を出して、次の『ZOOEY』まで3年ぐらい経った。その間、全国のライブハウスを回った。まさに「星の下 路の上」という曲のタイトルどおり、僕は街路に戻った。



―大きな会場でもできるのに、それを佐野さんのキャリアでやるのがすごいと思います。ソングライティングに何か変化は生まれましたか?

佐野:自然に変化したと思う。〈言葉〉〈メロディ〉〈ビート〉、この3つの間にどうしても垣根ができる。それを取り払って一つの表現としていくのが、僕のスタイルだ。

―佐野さんの中でそれができたと思った曲は何ですか?

佐野:「コヨーテ、海へ」はうまくできたと思う。言葉とメロディがぴったり寄りそっている。

―素晴らしい曲です。そして、佐野さんの音楽には、越境というテーマが見えてきます。越境と言うと、2010年代は分断/壁が世界的な問題になりました。トランプ大統領の誕生、SNSにおける誹謗中傷もそうですし。そういうものを佐野さんの音楽は超えている気がします。

佐野:世界のありようは日常の延長にある。だから曲はたいてい身の回りの出来事から生まれる。

―俯瞰と接近を繰り返している。

佐野:そうだね。

―もう一つ、佐野さんの音楽を語る上で欠かせないキーワードの一つが「愛」だと思いますが、人生で最初に書いたラブソングって何ですか?

佐野:十代の時に書いた「グッドバイからはじめよう」か「情けない週末」。ずっと後にレコード化した「君がいなくちゃ」もそうかな。書いたけれど忘れた曲もある。

―ラブソングや愛という概念に対する考え方は、この40年間で変化しましたか?

佐野:大きな変化はないな。「愛」というのは表現者にとって尽きることのない深いテーマ。テーマとしてはこの上なく魅力的なんだけど、厄介極まりないものでもある。

―そうですよね。

佐野:男女の愛もあるし、広義な意味での人類愛もある。「憎しみ」の本質を見極めるための概念でもある。

―僕は「シュガータイム」が本当に好きなんです。

佐野:あぁ、「シュガータイム」。キュートなラブソング。今書け、と言われても書けないな。あの年齢、あの時代だから生まれた曲だと思っている。そして思いのほか生命力が強い。今でも好きな曲だ。

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