追悼ショーン・コネリー、圧倒的なカリスマ性を持った最後の映画スター

40代になると、コネリーは突如としていつになくより大きく、騒々しく、堂々とするようになった。感動作『ロビンとマリアン』では、疲れ切ったロビン・フッドを演じ、シャーウッドの森でオードリー・ヘップバーン扮するマリアン姫と再会を果たした。同作でコネリーはキャリア史上もっとも強烈な演技を披露し、ロビン・フッド役は生涯の当たり役となった。英作家ラドヤード・キプリングの作品を映画化した『王になろうとした男』では、実生活でも友人のマイケル・ケインとともに1880年代のインドを舞台に、ふたりのペテン師を演じた。互いのタバコに火をつけたり、行進したりしながら、軍隊を利用して小国を乗っ取り、王として君臨しようと企むふたりの犯罪者を完璧に演じた。コネリーが演じたダニー・ドレイボットは、犯罪者のなかでももっとも危険なタイプだ。なぜなら彼は、自分がついた嘘にさえ惚れ込んでしまう謎めいた悪党なのだから。

これらの作品はヒットしなかったものの、のちに私たちが知る大御所俳優というコネリー像を打ち立てた。それ以来、コネリーは引く手数多の人気俳優となり、良作駄作にかかわらず、さまざまな作品に出演した。『ハイランダー悪魔の戦士』(1986)、『バンデットQ』(1981)、『さらばキューバ』(1979)、『アウトランド』(1981)、『ザ・ロック』(1996)、『未来惑星ザルドス』(ディストピアを描いた1974年の映画で、「私は未来を見たが、それは機能していない」というセリフが有名)、『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989)(同作では、年齢差わずか12歳のハリソン・フォードの父親役を演じた)。『アンタッチャブル』(1987)では、活気とユーモアあふれるシニカルなシカゴの警官を演じてアカデミー賞助演男優賞を受賞。もうすぐ還暦というところで、コネリーは初めてボンドを超えた。007を出し抜いた唯一の人物がショーン・コネリーだったわけだ。

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コネリーは数え切れないほどのB級映画にも出演したが、いつも自分らしくあり続けた。彼にはどんなときも、クロスビー・スティルス&ナッシュと共演していた頃のニール・ヤングの「一緒にツアーは回らないけど、ライブには姿を現す」的な威勢の良さがあった。観たことのある作品にはほぼ必ず出演しており、いつも特徴的な重々しさを見せてくれた。1993年の見事なまでに滑稽なクライムスリラー『ライジング・サン』では、ウェズリー・スナイプスとタッグを組み、日本の暴力団に挑んだ。劇中では、日本文化の洗練さについてスナイプスに講義をしている。1999年の美術強盗を描いた『エントラップメント』では、窃盗団の温厚な長を演じ(コネリー主演作にしかあり得ない役柄)、『007は二度死ぬ』と『007/ダイヤモンドは永遠に』の間に生まれたキャサリン・ゼタ=ジョーンズと共演した。コネリーのように自分に自信のない俳優がこの手の作品に出演すると、率直に滑稽になってしまう。それはセルフパロディ的だったり、観ている人を悲しい気分にしたりする。だが、コネリーが自分を見失うことはなかった。

コメディアンのダレル・ハモンドは、米人気番組『サタデー・ナイト・ライブ(通称SNL)』恒例の「Celebrity Jeopardy」というコーナーでコネリーのカリスマ性をとらえ、アレックス・トレベック的クイズ司会者の俳優ウィル・フェレルをいじった。だが、フェレルのほうが一枚上手で、コネリーのモノマネを主演作『Anchorman(原題)』で自ら演じたロン・バーガンディー役のモノマネに変え、「Great Odin’s raven!」や「By the beard of Zeus!」のようなセリフを叫んだ(ここでフェレルは、『王になろうとした男』のお気に入りのセリフである「God’s holy trousers!」のパロディを披露)。

相当な物議を醸した後——というのもコネリーは、スコットランドに対する愛国心を公言していたから——コネリーは、2000年にエリザベス女王からナイト爵位を授与された。2003年の『リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い』が遺作となる。コネリーがジョークのネタになることはなく、彼は決して滑稽にもならず、ミスキャストという罠にもはまらなかった。プライバシーを徹底して守り、大のゴルフ好きであるコネリーは、意外にも45年間ひとりの女性だけを妻とした。ユーモアのセンスはもとより、気難し屋特有の独立心を最期まで失わなかった。彼のような俳優は、もう現れないだろう。さあ、ショーン・コネリーに献杯しよう——ステアではなく、シェイクで。

Translated by Shoko Natori

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