U2『All That You Can't Leave Behind』20周年、ジ・エッジが振り返る完全復活の裏側

再発見したロックンロールの本質

ー『ザ・ベスト・オブU2 1980-1990』が発売になった1998年の終わり頃、前触れもなく突然に、ラジオで「スウィーテスト・シング」がヒットしていたと記憶しています。曲さえ間違っていなければ、人々にはまたU2を受け容れる準備があるという証明に見えていたようにも思えるのですが。



ジ・エッジ:かも知れないね。だから俺たちも、一番大事なのは人々の想像力に訴求することなんだと気がついたんだ。一つには、ロックンロールというのは常に驚きや新たな考え方を提示しなければならないものだという面がある。あのヒットに勇気をもらえたことは本当だ。

あるいは「ポップマート・ツアー」で俺たちは、つい自分たちでは手に負えない何かにまで手を出してしまい、それゆえもう二度と元の場所には戻れないんだという考えにつきまとわれているように見えていたかも知れない。でも実体は真逆だ。人々は俺たちがやっていることに興味津々でいてくれた。そこで起きていたのは、好ましいカオスとでもいうべき事態だったんだ。自分たち自身と観客との間にある一定のバランスを維持しようとする力学によって生じるような渾沌だ。

目的をあまりに高く置き過ぎると、得てしてときおり忘れものをしてしまう。『POP』を振り返ればおそらく俺たちは、あそこに一曲も、人々と繋がれる曲というのを押し込むことができなかったんだ。それはたぶん、曲作りそのものがサウンド的な実験の後塵を拝するような位置におかれてしまっていたせいだ。実験の部分を喜んでくれていた人もいた。だが俺たちも、いずれは曲作りの方に重きを置いたものを届けなければならなくなるだろうという事実には気がついていたんだ。

そして『All That You Can’t Leave Behind』へと突入した。新たな千年紀の始まりだという意識が頭の中の大部分を占めていたものだ。タイトルが全部だよ。“置いてはいけないもののすべて”さ。これは、残していってはいけないものだけ、という意味にも取れる。つまりは本質的なものごとだ。当時の様々な意見がすっかり昔のものとなった今、この作品が残したものというのはいったいなんだと思う? 俺たちはだから、歌そのものだと理解してるんだ。

Translated by Takuya Asakura

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