U2『All That You Can't Leave Behind』20周年、ジ・エッジが振り返る完全復活の裏側

再起動には自然なタイミングだった

ー現在はどんなふうにお過ごしですか? 今のところロックダウン下の生活にも十分適応はできている感じでしょうか?

ジ・エッジ:ああ、半分冬眠しているとでもいった状態かな。仕事のことでいえば、音楽のアイディアに関しては何かしら書き留めておくことを自分に課している。そもそもどこに出向く予定もなかったからね。だからロックダウンと言われても、それほど衝撃ではなかったことも事実だ。ある種の人々と簡単に会えない点は不満の募る事態ではあるけれどね。それに、毎度毎度自宅で食事をしなければならないことにもやや飽きてくる。でもその辺りを除いてしまえば俺自身は好調だし、むしろ創造的な時間を過ごせていると言わなければならないだろうね。

外に出て行く仕事で生活を支えている人々の心情については察して余りあるよ。もし今自分たちがツアー中だったり、そうでなくてもその計画がある状態だったとしたら全然違っていたとも思うしね。たまたま俺たちがこういう時間の過ごし方をしようとしていた時期に、まさにこの状況が重なったということではある。

ー貴方がたには幸運なタイミングだったという訳ですね。直近のツアーが終了したのが、ちょうど公演の類が不可能になってしまう数週間前でしたものね、辛うじて予定を消化し終えていた、というところでしょうか。

ジ・エッジ:我々のマネージメントは実に優秀なんだ。もっとも、よもやここまでとは俺も知らなかったがね。



ー『All That You Can’t Leave Behind』の話に入りましょう。1998年初頭に「ポップマート・ツアー」が終了になった段階で、バンド全体の精神的状況というのはいったいどんなものでしたか? 個人的にはあのアルバムもツアーも大好きだったのですが、でも、おそらくはご自身が考えていた通りには進まなかったこともまた本当だったのではないでしょうか。

ジ・エッジ:「ポップマート・ツアー」を突き詰めて考えたうえで、イチかバチかでもああいう形でやってみようと決めた時、つまりは「Zoo TV」よりも大規模なものにしようということだが、その段階では、俺たちはみんなある種の解放感を覚えてもいた。もちろん当時はそれまでやったことのないスケールだったからね。だから、ようやく全日程を終えた時には、全員で目と目を見合わせてこう思い合ったものだよ。「よし、考えていた通りにやり終えたぞ」。

初日までには徹底的にリハーサルを重ねた。もちろんそんなことが初めてだった訳でもないが、すべてが観客の前ではたしてどうなるものかを見極めておかなくちゃならなかったからね。公演を舞台の上に持ち込むことにはいつだってハッとさせられる部分がある。それに、毎晩のように、ああ、もう少し上手くやれたところがあったなとも思わされるもんだよ。もうちょっと力強く表現できたな、とか、そういうことだ。でもツアーが終わる頃にはすべての試みが満足のいくステージに繋がったと思えるようになっていた。あのツアーの映像には俺自身ものすごく誇りに思っている。

だから、まずは何よりも肩の荷を下ろせたような感じだった。でも同時に、千年紀の終わりが近づいているんだなということが頭にあったのも本当だ。当時の俺たちにはすごく重要なことだった。何か刻みつけなくちゃという気持ちになっていた。だからある意味では、再起動して自分たちがバンドとしてやろうとしていた一切を見つめなおすには実に自然なタイミングだったんだと思うよ。

Translated by Takuya Asakura

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