女性メンバーを性搾取してきたカルト集団創設者、懲役120年の判決理由

2019年5月7日の公判スケッチより 性的人身売買の裁判初日、弁護士のポール・デアオハネシアン氏(左)とマーク・アグニフィロ氏(右)に挟まれて座るネクセウムの元リーダー、キース・ラニエール被告(中央)(Elizabeth Williams/AP)

エリート向けの自己啓発団体を隠れ蓑に性行為を強要していたカルト集団「ネクセウム」の指導者、キース・ラニエール被告に対し、懲役120年の判決がくだされた。

現地時間10月27日、米ニューヨーク・ブルックリン連邦裁判所のニコラス・ガラウフィス判事は、ラニエール被告に合計で120年の懲役刑を言い渡した。COVID-19によるソーシャルディスタンス・ルールにより、報道陣や傍聴人を全員収容するために別室6部屋を開放しなければならないほど大勢が法廷に詰めかける中、ガラウフィス判事が判決を読み上げた。みな熱心に、15人の被害者の意見陳述に耳を傾ける。後にいくにしたがって、陰惨さの度合いが増していった。

「ラニエール氏の行いはどこからみても、自分には法律が適用されないかのようなふるまいでした」 ガラウフィス判事は判決を言い渡す前にこう述べた。「残念ながら、そうはいきません」

ラニエール被告は2019年春、売春、恐喝、電信詐欺共謀、売春共謀など7件の刑事起訴すべてで有罪が確定した。裁判では大勢の元支持者が彼に不利な証言をした。その中には、かつてネクセウムのNo.2と呼ばれた映画監督のマーク・ヴィンセント氏(先週シーズン1が終了したHBOのドキュメンタリー『The Vow』でも大きく取り上げられていた)や、ネクセウムの共同創始者ナンシー・ザルツマン被告の娘で、ラニエール被告の元恋人だったローレン・ザルツマン氏の姿もあった。

ラニエール被告は何十年もの間、複数の階層を持つ組織ネクセウムの共同創始者兼トップとして君臨した。オールバニーを拠点に活動するこの組織は、サイエントロジーや客観主義など多様な哲学や自己啓発メソッドの寄せ集めだったと言われてきた。『ヤング・スーパーマン』の出演女優アリソン・マックや、ドラマ『ダイナスティ』の主演女優キャサリン・オクセンバーグの娘、シーグラム社の令嬢クレア・ブロンフマンなど、数多くの著名人がネクセウムを信奉した(ブロンフマンは身元詐称および移民詐欺に関する罪で有罪を認め、先ごろ懲役6年9カ月が言い渡された)。

ラニエール被告はネクセウムの組織内に、「主人」と「奴隷」、そしてラニエール本人が「大主人」を務める女性だけの組織DOSを運営していたと言われる。先のザルツマン氏や、入会の儀式の一環で目隠しをされた状態でオーラルセックスされたという若い女性ニコールさんをはじめとする元奴隷の女性たちは、被告のイニシャルの焼き印を体に入れさせ、過酷な肉体労働を課せられた他、1日500kcalという食事制限を強いられたと証言した。また「担保」として、破廉恥なヌード写真や卑猥な写真、その他不名誉な物品を提出しなければならなかった。

「被告人は終始、まやかしを吹き込んでいました。被害者をコントロールしつつ、それは女性の地位向上のためなのだと」 アメリカ連邦地方検事局のタニア・ハジャール検事補は裁判の冒頭陳述で、DOSについてこう述べた。彼女はラニエール被告を、か弱い女性たちをねらった「詐欺師」と呼んだ。

Translated by Akiko Kato

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