ブルース・スプリングスティーンの名曲ベスト40選

最新アルバム『レター・トゥ・ユー』をリリースしたブルース・スプリングスティーン(Photo by Danny Clinch)



10位→8位

10位 「プロミスト・ランド」/『闇に吠える街』(1978年)収録



明らかにニュージャージーのイメージではない。曲に登場する竜巻や“ユタの砂漠を走るガラガラヘビの高速道路”などは、『闇に吠える街』の制作中にスプリングスティーンが車で出かけた長旅にインスパイアされたものだ。一方でシンプルかつストレートな曲調は、アルバム『明日なき暴走』で聞かせた壮大なウォール・オブ・サウンドの反動だと言える。「あの大音量からスケールダウンしたいんだ、と彼が言っていたのを覚えている」と、プロデューサーのジョン・ランドーは後に語った。スプリングスティーンは、幾重にも作り込まれた『明日なき暴走』からの脱却を図ろうとしていたのだ。ビタンによるシンプルだが広がりを感じるピアノと、ワインバーグのドライブの効いたビートが、大きなコミュニティの中から脱して独立したいという欲求と共に感じる孤独とフラストレーションをイメージさせる歌詞にマッチする。「俺たちの、フォークをベースとしたロックの原点だ」とスプリングスティーンは表現する。「ブルーズとフォーク、そしてフォークソングの構成への回帰だ。メロディックにしようとは考えなかった。そうなるとポップの世界へと入り込んでしまうからね。ある意味で、ウディ・ガスリーやカントリーからザ・アニマルズまで、幅広いロック=フォーク音楽を目指したのさ。」

9位 「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」/『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』(1984年)収録



楽曲「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」も、表面上は穏やかな復員軍人の嘆きを描写したシングルB面の「シャット・アウト・ザ・ライト」も、第三の未完成曲「ベトナム」がオリジナルになっている。「ベトナム」は2つの曲に分割され、片方には映画監督のポール・シュレイダーが送ってきた台本のタイトル「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」をそのまま付けた。この曲は当初、アルバム『ネブラスカ』のセッション用のデモとして、ソロのアコースティック・バージョンがカセットに録音された。しかしその時は、あまりパッとしない曲だった。「『ネブラスカ』のデモ・テープの中でも、よくない部類の作品だった」とプロデューサーのジョン・ランドーは言う。しかし、スプリングスティーンがEストリート・バンドとのセッションでこの曲を再び取り上げると、素晴らしい生命が吹き込まれた。「ほとんど即興でプレイした」とスプリングスティーンは振り返る。「バンドにはほとんど何も説明しなかった。“ロイ、リフはこうだ”といった感じで始めた。するとロイはあのサウンドをチョイスして、シンセサイザーでリフを弾き出した。皆で2回やったが、2度目のテイクがレコードに採用された。だからあの緊張感が出ているのさ。俺は、なかでもマックス・ワインバーグが際立っていたと思う。何のアレンジも加えていない。“俺が止まってもドラムは叩き続けてくれ”と伝えていた。だから、曲のラストはああなったんだ」

8位 「闇に吠える街」/『闇に吠える街』(1978年)収録



もしも『明日なき暴走』の収録曲が恋愛の逃避行ばかりなら、次のアルバムは足を地につける場所探しということになるだろう。アルバム『闇に吠える街』のエンディングのタイトル曲では、妻もお金も人生への希望も失いつつも、「今夜俺は丘の上に立つ。俺は止まることができないから」とスプリングスティーンは、Eストリート・バンドが得意とするアレンジに乗せて繰り返しつぶやく。スプリングスティーンは曲の主人公について、「自分を取り戻すために全てを捨て去らねばならない状況に追い込まれた」と説明する。スティーヴ・ヴァン・ザントは、この曲がアルバム全体を象徴していると言う。「勇気があるようにも見えるが、実は妄想や衝動だったりする」とヴァン・ザントは指摘する。「この曲はアルバム全体を見事に総括している。“ハッピーエンドである必要はない”のさ。映画のような展開だが、規模は小さい。カメラがズームインする。インディペンデント映画のようなものだ」

Translated by Smokva Tokyo

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