投資家から指示される、米「バーチャルアーティスト・レーベル」が仕掛ける新しい試み

それだけでなく、Spirit Bombはアーティストとのコラボレーションにも全力を注いでいる。バーニングマン・フェスティバルの舞台でXenは、フライング・ロータスのBrainfeeder、ゼッズ・デッドのDeadbeatsといったレコードレーベルに所属しているアーティストのトラックを織り交ぜて披露した。Anti-Fragileの楽曲には、オルタナティブ・ロックバンドのトレイル・オブ・デッドのメンバーの作品が含まれる予定だ。楽曲リリース以外にも、Spirit BombのキャラクターはライブストリーミングやSNSにも登場する。同社は、ファンの反応をチェックしたうえで、さらなるキャラクター開発に着手する予定だ。

リアルとそうでないもののあいだを行ったり来たりするこの手のデジタルアバターをめぐる懐疑的な意見は、現在も世間に蔓延しているかもしれない。だが、Spirit Bombのバーチャルアーティストはあくまで平和的な存在だとサイモン氏は断言する。同社は、リアルなアーティストと抽象的なキャラクターを交換することは望んでおらず、リアルなアーティストのための新しいマーケティングチャンスを導入したいと考えている。それにバーチャルキャラクターは、ソングライターやプロデューサーの懐を豊かにできるかもしれない。なぜなら、アーティストのギャラを考慮せずにより大きな収益を手に入れることができるのだから。

曲を作ったものの、どうしていいかわからずにいるアーティストにとってもSpirit Bombは独創的な新アウトレットになるだろう、とサイモン氏は期待を寄せている。ただ、見方によってはキャラクターのためのゴーストライターとなるため、こうしたコラボレーションに関わるアーティストはエゴを「抑える」必要があるとも話す。

「AIやこうしたキャラクターが人々を不安にする原因の一部は、彼らが人間を乗っ取る、あるいは人間に取って代わり、どうしてか制御不能になるかもしれないと思われているからです。でも、私たちの全キャラクターは、人間の工夫の産物です」とサイモン氏は語る。「自分たちよりもっともっとビッグなものを作ろうと大勢の人間が制作に携わり、やがては作品として独り歩きするという点では、音楽や映画といった作品と何ら変わりません」。

さらにサイモン氏は続ける。「人間のアーティストと同じ気持ちでバーチャルアーティストのことを想う人はいないでしょう。それに、私たちはあなたのお気に入りの生身のスターの代替手段としてこうしたキャラクターを開発したわけではないのですから」。

Translated by Shoko Natori

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE