MONO NO AWAREの曲作りのポイント、「何かと何かがつながる瞬間の喜び」を玉置周啓が語る

初恋の人への恋心が強烈に迫ってきて書いた歌詞

─玉置さんの歌詞には、いつも絶妙なバランス感覚を感じます。「ゾッコン」でも、“運命なんだろう 前の恋とは違うぜ 毎回言ってる気もしなくもないけど”とか、“でもあきらめちゃうほど簡単じゃないんだね ろくなことにならない気しかしないけど”みたいに、自分に自分でツッコミを入れるようなところがあって。

玉置:それはありますね。この曲は18歳の時に書いたと言いましたが、初恋の人にフラれた後、別の人を好きになっていく間、なぜか初恋の人への恋心が強烈に迫ってきて、作った歌なんですよね。新しく好きになった子にアプローチしようとすればするほど、フラれた子への「好きだった気持ち」が溢れてきてしまったと。

─えっと、それはどういう状態なのだろうか?(笑)

玉置:自分でも分からないんですよ(笑)。「代わりを探していただけ」という言い方もできるし、単に僕の感覚がおかしいのかもしれない。それまでも曲作りはしていたんですけど、恋心を歌い上げるようなものって全然なかったんです。でもフラれて初めて、その人への気持ちを歌詞にしようと初めて思った。恋の終わりを前に悲嘆に暮れているにも関わらず、「失恋ソング」にはならずああいう歌詞になりました。

─サウンド面では、どんな工夫を施しました?

玉置:そのまま演奏してしまうと本当に爽やかなだけの曲になってしまうと思って、今回は初めてマーシャルのギターアンプで鳴らし、高音のキンキンした感じを強調しました。速いパッセージのリフやフレーズを、ちょっとずっこけた感じの弾き方で随所に散りばめたつもりです。

─玉置さんの書く楽曲は、古今東西様々な音楽のエレメントを絶妙なバランス感覚でブレンドしているところがユニークだと思うのですが、ソングライティングの際にはどんなことを心がけていますか?

玉置:僕、何かにハマるということがあまりないんですよ。アーティストって一つのことにめちゃくちゃ集中して、「それをやっていれば幸せ」みたいな状態になるじゃないですか。恥ずかしながら、それが僕にはない。基本的に飽き性だし、何かにこだわったり固執したりすることもほとんどないから、よくインタビューなどで「アーティストとしてどんな矜恃をお持ちですか?」というような質問をされても、そのたびに答えに困ってしまい「これを言ったらカッコいいかな」みたいなことを言うことしかできなかったんですね。

右を見れば「あの人まじで天才だな」と思う人がいて、左を見れば論理立てて楽曲を構築していく勉強家の人もいて。そのどちらにもなれない感覚があるんですよね。

─なるほど。

玉置:ただ、唯一いつも大切にしているように思うのは、「これとこれは似てるな」と思ったら、それらを貼り合わせたり融かし込んだりする感覚。映画を観ている時も「あの本のここと言ってることが同じだ」と思ったり、「この曲のリフが、時代もジャンルも全く違うこの曲のリフと似てるのは何故だろう?」と考えたりしているんですけど、自分の音楽の中でも、そういうマッシュアップをたくさんやっているつもりで。何かと何かがつながる瞬間の喜びに没頭して作るので、自分でも元ネタが分からなくなることも多いのですが。

─全く別のものの中に共通点を見つけて、新たな文脈を作っていくのはエディター的な目線でもありますよね。

玉置:確かにそうですね。自分のことを「アーティスト」とは思えないし。ただ、身体の底から叫びや祈りのように生まれる音楽や、古来からのルーツを真摯に引き継いだ音楽に限らずとも、刺激的な作品を作ることができるのではないか、とは考えています。

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