矢沢永吉がロックで上り詰めるまで 1970年代の楽曲とともに語る

バーボン人生 / 矢沢永吉

作詞は「トラベリン・バス」でお馴染み、西岡恭蔵さんです。矢沢さんの曲には、作詞家がNOBODYの相沢行夫さんと木原敏雄さんなど何人かいるのですが、恭蔵さんの歌詞が一番アメリカっぽい。バタくさい。矢沢さんのアメリカっぽいルーツ・ミュージック的な面も引き出していて、このコンビは本当に素晴らしいと思いました。西岡恭蔵さんが亡くなった時には、矢沢さんはアメリカからとんぼ返りで帰ってきて参列されていたと思います。一枚のアルバムの中に「黒く塗りつぶせ」と「世話がやけるぜ」と「チャイナタウン」、「バーボン人生」が入っているんですよ。いかに『ドアを開けろ』が素晴らしいアルバムだったかお分かりいただけたら幸いです。1970年代のピークでいえば1978年でしょうね。これは矢沢さんにというのではなく、日本のロックがあるピークを迎えた年。資生堂のCMソングで「時間よ止まれ」が流れて、ロックがお茶の間に認知される。ドアを開けたんです。「時間よ止まれ」のミュージシャンには、坂本龍一さん、後藤次利さん、高橋幸宏さんなどそうそうたるメンバーが揃っていましたが、それも矢沢さんの希望だった。6月に出たアルバム『ゴールドラッシュ』が一位、自伝の『成りあがり』が発売、長者番付が一位、8月に後楽園球場という流れがありました。改めてお聴き下さい、「時間よ止まれ」。

時間よ止まれ / 矢沢永吉

これはオリジナルのままの音源なんですが、リマスタリングされてるんです。タイトでクリーンでソフト、全然違って聴こえますね。先週矢沢さんが言っていましたが、今の音にしたいということでこういう形になった。そういう象徴的な一曲です。この「時間よ止まれ」は、テレビの特番の中でドラマ化されたことがありました。僕はテレビをあまり観ないのですが、この曲を作ったCM音楽制作会社ONアソシエイツのディレクター、関口直人さんにこの曲のお話を伺ったことがあります。資生堂の会議というのがあってそこに矢沢さんも出席されて、そこでギターを弾いたと仰っていました。この曲は、ツアー中にギターを弾いていてすぐに出来たと『ALL TIME BEST ALBUM』の中に書かれてました。この曲があったからこそ、矢沢永吉という名前がお茶の間にも浸透し、ロック御三家というところに繋がっていく。そういう意味では、日本のロックにとっても重要な曲なんだと思います。この曲のリマスタリング、音についてはあまり語られてくることがなかったので、今回の『STANDARD~THE BALLAD BEST~』がいい機会になればいいなと改めて思います。そして、今日最後の曲は『ゴールドラッシュ』から「長い旅」。

Rolling Stone Japan 編集部

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