アイス・キューブがトランプ陣営に協力、本人が明かすその真意

これは政党を超えた問題

—具体的に目に見える形で、どんな風に考え直すべきだと思いますか? 少なくともバイデンの場合、具体的な法案は何も出ていません。

キューブ:少なくともまずは、実現すると同意すること――同意を公表して、アイス・キューブとの口約束じゃないってことを世界にはっきり伝えるべきだ。

向こうが政権を握ったら、こっちはあらゆる場所に圧力をかけていく。当選を狙う候補者だけじゃなく、中間選挙の時でも、なんでも。立法制度を通じて圧力をかけることだって可能だ。手段はいくらでもあるし、プッシュできる部分はまだまだある。圧力をかけてくれるだろうと期待してきた連中が、手付かずのままにしているようなところがね。

俺が対処できるのは、Contract With Black America計画での自分の範囲内のことだけ。俺としては、8~10年かけて従来のやり方を、黒人奴隷の子孫にプラスになるようなやり方に変えていく。それが目標だ。今回の選挙で誰が大統領になろうと知ったこっちゃない。これは政党を超えた問題なんだ。民主党だけの問題じゃない。解決できるかできないかは両政党次第だ。前にも両政党が力を合わせて、政府の債務上限や軍事費拠出を解決してきたみたいにさ。ある段階を過ぎれば、しかるべき時にいつも「党を超えた」動きが出てくるもんだろ。

だから、今回も同じようなアプローチで臨む必要が出てくるだろう。誰が大統領だろうと知ったこっちゃない。俺が唯一気にかけているのは、(黒人アメリカ人が)資本と資産を手にすること。俺たちはゲームの仲間にすら入れてもらってないからさ。自分たちはそのつもりで、そうふるまっている。でも資本主義社会では、金がないとゲームにすら参加できないんだ。

—この点に関しては、二大政党もそれぞれの議員も、我々黒人のチャンスを侵している点では変わらないと思いますか? 民主党、共和党、どちらの政党も今まで我々のコミュニティにひどい仕打ちをしてきました――と同時に、とりわけ今この時期は、どちらの議員も同じように解決へ向かって動いているのではないでしょうか?

キューブ:まさか、とんでもない。いかにも解決法を模索しているように見えても、実際はことを余計ややこしくしているだけさ。奴らのせいで、どうあがいてもやはり底辺には金は回ってこない。奴らは言葉尻でごまかしているのさ。「マイノリティ」「ダイバーシティ」「有色人種」、そういう文言で俺たちはその他大勢としてくくられる。でも実際はそうじゃない。どっちの政党も同罪だよ。

俺からも質問させてくれ、俺たちみんな一方の政党に肩入れしてきているだろう? どっちが最悪だと思う? 敵に裏切られるのと、ファミリーに裏切られるのと。

—ファミリーに裏切られるほうが最悪でしょうね。断言します。でも質問からして間違ってますよ。問題は、そもそも政治家を「ファミリー」と呼んでよいものか。彼らはファミリーじゃありませんよ。

キューブ:なら、「友人」(friends)はどうだい。

—そうですね。

キューブ:友人ならいいだろ。

—ええ、友人、そうかもしれませんね。ですが私に言わせれば、いま我々は招かれざる話し合いの場になんとか入り込もうとしている状態です。それよりむしろ、権力を握ることに注力するべきではありませんか?

キューブ:60年代からずっと、同じ戦いを続けている。当時から今にいたるまで、全米中で男女問わず(数千人もの)黒人が選挙で当選し、有力な地位や政府のポストについてきた。だけど1ミリも前に進んでいない。交渉の場にはつけたかもしれないが、いまだに権力は手にしていない――金がないから、権力が手に入らない。資産がないからさ。これじゃまだ足りないんだ。基本的に俺たちが持っているのは、他にいい言葉が見当たらないが、黒いケツだけ。俺たちが持っている黒人であることの誇りと、減らず口だけ。

何とかして、どうにかして、こうした流れを変えなきゃいけない。「友人」なら、こうした流れを変えてくれるだろうと思ったんだ。だが今、俺たちは瀬戸際に立たされている。経済支援や補助金がどこから湧いてくるかもわからない状態だ。

協議をめぐる一連の騒動は……勘弁してくれよ。キリストは権力者と謁見した。モーゼは権力者と暮らしていた。だとすれば、俺たちも権力者と話をするべきだろう。世界で成し遂げようとするものが何であれ、権力者と話をするべきだ。

俺はトランプと話をしたことはないし、今まで会ったこともない。トランプ陣営の連中と話をして、奴のプランに少し手を加えただけだ。それが真実だよ。実際に何が起きたか、ほらを吹いても構わないがな。それが真実、実際に起きたことだ。民主党の場合も同じ。民主党とはまた会う予定だ。

それといいか、俺は誰に投票しろなんて言うつもりはない。俺は誰も支持しちゃいない。1人1人が自分で決めればいいことだ。ただ、実際に起きたことはこの通り。俺は要求が通るまで、あらゆる大統領に直談判するつもりだ。こっち側、あっち側、あっちのチーム、こっちのチームと渡り歩く、なんて駆け引きはごめんだ。知ったことか。俺は1つの問題にこだわっている有権者なんだ。

Translated by Akiko Kato

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