トランプ大統領も偏愛、謎の女性記者とニュース専門局の正体

2020年4月10日、米ワシントンDCのホワイトハウス記者会見室で行われたコロナウイルス・タスクフォースの定例会見で質問する、OANのシャネル・リオン氏(Photo by Alex Wong/Getty Images)

2013年にできた新興放送局ワン・アメリカ・ニュース(OAN)。親トランプ派のニュース専門局として知られる同局の実態、そして看板記者として知られるシャネル・リオン氏の経歴を探った。

ホワイトハウスの記者会見中継を頻繁にチェックしている方なら、彼女を見かけたことがあるだろう。必ずといっていいほどスカーフを巻き、ベルト付きのトレンチドレスにきっちり書かれた眉、90年代のフラン・ドレシャーばりの高さまで逆立てた黒髪。足元は常にヒールだ。マスクはほとんど着けていない。彼女が質問すると、会場にいる全員が一斉にそちらを振り返る。いかにもジャーナリズム学校で悪いお手本として出てくるような質問だ。

トランプ大統領は、COVID-19パンデミック対策でメディアから不当に悪者扱いされていると感じていますか?(イエス) トランプ大統領は、アメリカ国内の児童買春の拡大防止に最大限の努力を払うおつもりですか?(これまたイエス) 極左団体アンティファのサイトantifa.comをクリックすると、ジョー・バイデン陣営のWEBサイトに飛ぶのはおかしいとお思いですか? バイデン候補とカマラ・ハリス副大統領候補は対処するべきだとお考えですか?(当然だ!) トランプ大統領はCOVID-19を「中国ウイルス」と呼んで批判されていますが、「中国料理」という言葉が人種差別的だと思いますか? 大統領の答えはノー。同情するかのように眉を寄せる表情をみる限り、シャネル・リオン氏の答えもノーだ。

【画像】トレードマークはスカーフのシャネル・リオン氏(写真3点)

リオン氏は親トランプ派のニュース専門局ワン・アメリカ・ニュース(OAN)の特派員。同局の番組やSNSの投稿は大統領もTwitterで大絶賛している。

「彼らは陰謀論を全面的に受け入れる姿勢を売りにしてきました。今ではFOXと肩を並べようと躍起です」とある右派メディアの内部関係者はこう語る。「ある意味、彼らはトランプ広報チームの一員のような存在です」。4月上旬、リオン氏が記者会見で再三ソーシャルディスタンス・ルールに違反したのを受け、ホワイトハウス記者団は彼女のメディアパス剥奪を投票で決定した。ホワイトハウスが出入り禁止を撤回したらしく、リオン氏はその後も記者会見の場に姿を見せた。ただし、会場後方の立見席で。

リオン氏の持ち味は(持ち味と呼べるなら)、記者会見中に他の記者が大統領に投げる質問とはほぼ無関係の、見当違いな誘導尋問まがいの質問を大統領にすることだ。「大統領が答えたがる質問を、ホワイトハウスが事前に彼女に教えていたんじゃないかと思ったときもありました」と、先の右派メディア関係者は言った。「でも、さすがにそれはないと思います。トランプ大統領が当惑する場面も多々ありましたからね」。つい最近も、彼女は大統領に独占インタビューを敢行し、痛烈な質問を投げた。「見たところジョー・バイデン氏は徐々に老衰へ向かっていますが、あなたは今も精力的です。その秘訣は何ですか?」

Translated by Akiko Kato

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