夏目知幸が語る、シャムキャッツに捧げた青春とこれから先に広がる景色

俺は嗤われたり叩かれたりする側でいたい

マッチョとかけ離れた世界観から誤解されがちだが、シャムキャッツの本質は呆れるほどの不器用さにある。浮上のきっかけとなった2011年の名曲「渚」で“これから何をしようが勝手だよ”と歌っているように、誰にも媚びることなく、安易な夢を口にせず、ひたすらやりたいようにやってきた。だからこそ、彼らの音楽はロマンティックに鳴り響くわけだが、「やりやすいと思ったことは一度もない」と夏目も認めるように、その道のりは苦難とハードラックの連続。それでも、バンドは弱者に寄り添い、心の中で中指を立ててきた。



「中島みゆきが“闘う君の唄を闘わない奴等が笑うだろう”と歌ってたり、ブルーハーツが“弱い者達が夕暮れ さらに弱い者をたたく”と歌ってたりするように、俺は嗤われたり叩かれたりする側でいたいんですよね。もちろん、自分は恵まれてるほうだと思う。なんなら“南風に吹かれながらシュールな夢を見て”いられる側なんだけど、それを自覚したうえで、『叩かれる側から戦う』のがどういうことか考えてきたつもり」 

デビュー当初から自分たちの居場所を見つけるまで悪戦苦闘の日々が続いたが、夏目のフロントパーソンとしての存在感は、「東京インディ」と呼ばれた2010年前後のシーンにおいて明らかに異質だった。「当時のインディーズと呼ばれたバンドの歌い手には、(忌野)清志郎タイプが全然いなかったんですよ。その席が空いてるなら、俺がやりますねって」と本人も語るように、エロとユーモアも交えた軽やかな歌によって、彼は独自のポジションを開拓していく。さらに、こんな裏話も打ち明けてくれた。

「最初のアルバム(2009年作『はしけ』)を出したとき、草食系男子バンドみたいな書かれ方をよくされたんですよ。当時の流行りなのはわかっていたけど、最低のラベリングだし気に食わないから、だったら既成事実を作ってやれと思って、その頃は闇雲に女を抱くモンスターになってましたね(笑)」


Photo by Mitsuru Nishimura

そういった夏目のワイルドサイドを、ある意味で象徴しているのがタバコだ。バンドでの制作中から呑み会の席まで、コミュニケーションを大切にしてきた夏目にとって、タバコは会話の間を保つための便利グッズでもある。さらに、「ライブ中に吸うタバコが一番うまいんですよ。衝撃的にうまい」と語るように、彼はステージ上でもたびたび一服していた。

「自分は童顔だから、ライブハウスでこの顔でカジュアルな格好していると舐められるんだよね。だから、タバコでも吸ってた方が格好つくかなと思って」

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