レディオヘッド『キッドA』20周年 絶望を描いた問題作が今の時代にも響く理由

レディオヘッド『キッドA』のジャケット写真

「20世紀最後の名盤」と呼ばれたレディオヘッド『キッドA』が先ごろ発表20周年を迎えた。このアルバムが2020年の今、不気味なほど重要に感じられる理由とは? ローリングストーン誌の名物ライター、ロブ・シェフィールドが考察。


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20年前、レディオヘッドが彼らの最高傑作『キッドA』をリリースした。発売は2000年の10月2日、ラジオで取り上げられなかったにも関わらずすぐにナンバーワンに輝いた(英米でチャート1位)。このエレクトロ・グリッチの傑作は当時議論を読んだが、レディオヘッドが『キッドA』のなかでつくりだした混乱は永遠に美しいまま。その謎は大きくなるばかりだ。

ローリングストーン誌が新たに実施した「歴代最高のアルバム500枚」では、投票の結果『キッドA』は20位という高順位を記録した。もしこの音楽が今日にも時宜を得て聴こえるとするなら、おそらくそれは世界がもっと『キッドA』的になってきたからだ。だから、いつかこれらの楽曲が、ついに古びて聴こえる日が来ることを望もう。『キッドA』は2020年という時代をあまりにも捉えた映画のサントラだ(motion-picture soundtrack)――本作は、危機を耐え抜き、困難の時代を乗り切るためのロボット・ブルースなのだ。



「僕はずっと、ドラム・ギター・ベースのバンドであり続けるのに抗うことにかけては極端なところがあった」とトム・ヨークは2017年、ローリングストーン誌のアンディ・グリーンに語っている。それゆえに、『キッドA』のセッション中は始終軋轢が生じていた。「他のみんなはどうやって参加すればいいかわかっていなかった。シンセサイザーで作業していると、まわりとのつながりが途絶えてしまうみたいになる。他の人と一緒の部屋にいないかのように。僕はみんなの暮らしをほとんど不可能なものにしてしまった」

再発明の過程で生まれる、痛みを伴う神経症的な混沌でもって成功に応えたイギリスのロックアクトはレディオヘッドが最初ではない――むしろ、イギリスのバンドはほとんどこの過程を経なければならないほどだ。ただし、バンド名が「schmoasis」と韻を踏む場合を除いて(訳注:オアシスのこと)。しかし常軌を逸しているのは、それがいかにうまくいったかだ。レディオヘッドが好んで使う動詞はいつも、“起こってしまう(happen)”だった。『キッドA』はこの動詞にとりつかれた作品であり、“僕はここにいない、これは起こっていない(I’m not here, this isn’t happening)”と“これは本当に起こっていることだ(this is really happening)”の両極に引き裂かれている。彼らは未来をたくさんのアクシデントが待ち構える新たな千年紀と捉えていた。ネタバレ注意:彼らは間違っていたわけではなかった。

Translated by imdkm

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