ロバート・プラントが語る「ツェッペリン以降」の音楽人生、亡きジョン・ボーナムの思い出

ロバート・プラント(Photo by Mads Perch)

ソロ集大成アンソロジーを発表した、ロバート・プラントの最新インタビュー。レッド・ツェッペリン以降のキャリアを振り返りながら、映画『あの頃ペニー・レインと』における「俺は輝ける神だ!」発言や、亡きジョン・ボーナムの思い出についてなど、数々のエピソードを明かしてくれた。


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パンデミックで世界中が閉鎖されてから半年以上が経過したが、わりと順調だとロバート・プラントは言う。「今もちゃんと生きてるし、ひねくれたユーモアも健在だ。歌もまだ歌える」と、何食わぬ顔で言った。「だがそれ以外は何も聞かないでくれ。今日が何曜日だろうと、毎日変わり映えしないんだから」

2020年の年明け、ロバート・プラントはアメリカにいて、この先1年のスタジオ制作やライブの予定を立てていた。自ら率いるバンド、セイヴィング・グレイス(Saving Grace)とともに、本人曰く「すごく小さくて地味な、こじんまりしたステージで『サイケデリック・フォークロック、アパラチア山脈へ行く』みたいな感じ」の小規模ライブをやれればと思っていた。5月に予定していたツアーはじきに10月に延期され、今では話は宙に浮いたままだ。「明らかに誰もが、そのうち解決して、このパンデミックもどこかに消えるだろうと思っていた。でもよくよく考えれば、どこかに消えるなんてことは到底ありっこなかった」と彼は言う。「あらゆることが先送り、立ち消え、中止、保留だ」

彼はたくさん本を読んで過ごしているが、ここまでのところ新しい曲を書く気にはなれないという。「どんな形であれ、ものを書く気分にはなれない。少なくとも曲という形ではね。あまりにも多くの出来事や状況に囲まれて、対応に追われ、影響も受けている。作品のアイデアがあまりにも漠然としていて、大衆音楽などまるっきり場違いだ」と彼は言う。「これほど四面楚歌の状態になったことは今までなかったんじゃなかろうか――少なくとも、1世紀前にスペイン風邪が蔓延して以来だ」

新作をリリースする代わりに、彼は普段やらないことをしている――回想だ。昨年プラントは『Digging Deep』というポッドキャストでこれまで手がけた楽曲の裏話を語り始め、そしてレッド・ツェッペリン解散後の作品を2枚組のアンソロジー『ディギング・ディープ:サブテラニア』としてまとめた。未発表作品3曲を含む楽曲は、年代とは関係なく並べられ、立て続けて聞くと1982年以来のプラントのソロ作品をつなぐ糸が透けて見えてくる。



ロックの新たな立ち位置を確立した『イン・ザ・ムード』にせよ、バンド「ザ・センセーショナル・スペース・シフターズ」と世界各地の音楽を融合した『エンブレイス・アナザー・フォール』にせよ、はたまたバンド・オブ・ジョイとブルースに挑戦した『チャーリー・パットン・ハイウェイ』にせよ、1曲1曲に懐かしい影や抑揚がうかがえる。プラントはつねに一筋縄ではいかないアーティストだった。ちょくちょく新しい方向性に挑戦し、詳しくは音楽を聴けといわんばかり。だからこそ、本人が歩みを止めて過去の作品を振り返るのは大きな意味がある。

「実際に聞いてみて、この歌詞を書いて歌ってるやつは休むことを知らないんじゃないか、と自分でも疑問に思うよ」。コンピレーションについて彼はこう冗談を言った。「休暇を取ったことはあるのか? ちょっとはおとなしくして、応用数学とか天文学とか新しいことを勉強すりゃいいのに?ってね。だけどまぁ、(『ディギング・ディープ』は)とにかく勢いにのってるよな。大胆不敵。ただ実際は、たぶん心の奥では自信なんてこれっぽっちもなかった。次から次へと仕事に取りかかって、さあどうなるか見てみようぜ、という感じだった。ここには(ボブ・ディランの)「戦争の親玉」とかに匹敵する曲はひとつもない。ある時ふと、ウェールズの辺鄙なリハーサルルームで生まれたような曲ばかりだよ」

とある土曜の午後遅く、現在住むイギリスで、プラントはたっぷり1時間――お気に入りのサッカーチームの試合中継が始まるまで――ローリングストーン誌の取材に応え、音楽人生の数々の節目をひもといた。現在72歳のシンガーは物思いにふけり、現在に至るまでの道程をしみじみ反芻する場面もあった。

「いまは不確かなことばかりだが、団結の精神にもあふれている」。イギリスの現状について彼はこう語る。「だが悲しいかな、みんなをまとめるルールブックがない。1973年にヘプトーンズが『Book of Rules』を収録したのが最後だ」

Translated by Akiko Kato

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