真心ブラザーズが語る、デビュー32年目にして極めた自然体

ー今作のそうした表現の仕方を聴いていて個人的に感じたことなんですけど、僕は1999年のアルバム『GOOD TIMES』を聴いて当時すごく感化されまして。シングルでもリリースされた「サティスファクション」で歌われている “不満はダサイ” という歌詞に衝撃を受けたんですよ。「ロックって不平不満を歌うものじゃなかったのか!?」って。



桜井:ははははは(笑)。

YO-KING:うれしいなあ~、それは。そこに衝撃を受けさせたかったんだけど、いまいち響かずに終わったと思ってたから(笑)。

ーめちゃくちゃ響いてますよ。それで今回『Cheer』を聴いていて感じたのが、真心ブラザーズの根底には “不満はダサイ” がず~っとあるんだろうなっていうことなんです。

YO-KING:うん、それはそう思ってますよ、いまだに、“不満はダサイ”って。どこにフォーカスするかっていうのはすごく大事なことで、不満なAという出来事に対してずっと考えるか、すごく満足で楽しかったBという出来事のことを考え続けるかで、その後がだいぶ変わってきちゃうんですよ。もちろん俺も人間だから、1から100まで不満がないわけじゃないんだけど、そっちに大事な人生の資産という時間とかお金を注ぎ込んでも本当に無駄じゃないかと思っていて。だったら楽しかったこと、うれしかったこと、幸せだったことの方を考えたり、これからもそういう気持ちになりたい予定を立てるとか。せっかく生まれてきたのなら、そっちで満たしていく方が得だなと思ってるんですよね。だから、俺はもはや“不満はダサイ”は越えてます。当然のことで。

ー桜井さんはいかがですか? 「こんぷろマインズ」もそういう思いがベースにあるからこそできているんじゃないかと思うのですが。不平不満に対する音楽表現の向かい方ってどう考えていますか。

桜井:それはすごくむずかしいですけど、やっぱり子どものわがままとかオヤジの愚痴になっちゃうと、エンターテイメント、表現にならないですよね。亡きナンシー関の文章とか、時空を超えて他の追随を許さない面白さで。ああいうことができたら最高ですよね。できない件に関しては、不満に関する曲は書かない方が。だ~れも得しないから(笑)。「ちょっとストレスっすよね~、どうしたもんかな」ぐらいのことは話題にしたいんだけど、後味はスカッとしたいという思いはあるので。

ー不満というか、誰かに猛烈にジェラシーを感じて苦しむ、みたいな経験ってこれまでなかったですか?エンターテイメントの世界にはつきものな気がしますけど。

YO-KING:俺はないです。

桜井:俺もないです、それは。

ーこちらも「ないだろうなあ」と思って聞いてはいるんですけど(笑)。

YO-KING:「そうだろうなあ」と思って答えたんだよね、俺も(笑)。

桜井:「もっと持て!」って怒られるぐらい、たぶんないと思う(笑)。

YO-KING:すごいなあ、いいなあと思う人はいくらでもいるんだけど、「ああなりたい」という人はいないんですよね。その人に負けないぐらい楽しく生きているという自信があるんですよね。その人がどのぐらい楽しいかわからないから、勝ってるかはわからないけど、ただ俺の方が楽しいんじゃないかなって(笑)。

ーあの人は楽しそうだけど、それに比べて自分は…… みたいにならないという。

YO-KING:ならない。作品を聴いて「かっこいいなあ」と思ったとしても、「でもこの人より俺の方が楽しいんだろうな」とか、変換しちゃってるのかもね。いくらそういう音楽を作りたいと思っても自分にできないものはできないし、あちらも俺のような音楽はできないと思うし。あとは売れてるか売れてないかの違いはあると思うし、そういう羨ましさとかはあるけど。本当の、表現者としてのジェラシーというのはないですね。

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