真心ブラザーズが語る、デビュー32年目にして極めた自然体

ーつまり、その抜け道の先にこの『Cheer』もあるわけですか。

YO-KING:そうですね(笑)。

ー本当ですか(笑)。桜井さんは『Cheer』が完成した手応えってどんな感じでしょうか。


真心ブラザーズの最新アルバム『Cheer』のジャケット写真

桜井:もう、「きたきたきた~」っていう感じですね。生みの苦しみとかっていうとまた別なんですけど、ソロ・アーティストじゃなくてバンドだからということもあって、1人が煮詰まろうが頑張ろうが調子良かろうが、全体的にはたいして関係がなくて。良い具合に、メンバー同士はもちろんのこと、関わっているミュージシャン、録音している録音技師や、ひいては制作に関わるスタッフのみなさんとの、なんか良いバイブスというか波長があって、「軽く振ったらホームラン」みたいな感じというか(笑)。力じゃなくて、重いバットを振ったから偉いとかそういうことでもなくて、上手い具合に振れてバーンと当たって「あ、これは入ったな」っていう感触が、マスタリングで通して聴いて良い音だなっていうのと、大きい音で聴いて全然疲れないところ、「ああ、全然もう一周いける」っていう感じで。そういう感触はたま~にあるんですけど、それがきたっていう感じです。

ー何作かに1回巡ってくるような感じなんですか?

桜井:もちろん、どの作品も同じようにそのときできるベストを尽くして楽しくやってるんですけど、「俺の与り知らない何かが働いとるぞ!?」っていうのがありました(笑)。

ー2017年の『FLOW ON THE CLOUD』、2018年の『INNER VOICE』の雰囲気とはまったく変わりましたよね。前作までは、今はこういうルーツ・ミュージックが好きなんだなっていうのが伝わってきたんですけど、今回は真心ブラザーズとしか言いようのない曲、音になっている印象でした。昨年のセルフカバーアルバム『トランタン』で過去の曲をアレンジし直したことの影響もあるのでしょうか。



YO-KING:制作に入るときの気分がすごく大事で。今年の2月ぐらいから曲作りを開始したと思うんですけど、そのときにこういう音楽をやりたいなって思っていたんですよね。コロコロ変わるから(笑)。あの2作は、ルーツ系がずっと持続していた時期で、今はね、またスライ(スライ&ザ・ファミリー・ストーン)みたいなのをやりたいなと思ってますね。この前、細野(晴臣)さんのラジオを聴いてたら、『Fresh』(スライの1973年のアルバム)を新譜の時に聴いて現世に戻ってこれたって言ってて(笑)。それまで、高田繁さんと1920年代、30年代のレコード棚でバッタリ会うことがあって、「俺たち、このままでいいのか?」って言ってたんだって。

桜井:ははははは! 確かにそうだよね(笑)。

YO-KING:それで、『Fresh』を新譜で聴いてガーンときて、現世に戻ってこれたって言ってて。「ああ~、『Fresh』かっこいいよね」って聴いたらやっぱりかっこよくて。今何度目かのスライブームが来てますね。

ーそうなると、ライブでも「STONE」が出てきそうな予感がしますね(笑)。

YO-KING:そうですね(笑)。「STONE」の間奏でスライのカバーやってるもんね。「Running Away」とか、ああいう乾いたファンクみたいなものが好きですね。

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