重症心身障害児の親たちがコロナ禍で抱えるジレンマ

学校には戻らないという選択肢

ユタ州ノースオグデンに住む15歳のサイモンくんは、この秋学校には戻らないつもりだ。母親のヴァロリー・ドダートさんがその理由を教えてくれた。「息子の主要疾患は11qトリソミーと20pモノソミーです。そうした病気の症状には、四肢麻痺や癲癇、自律神経障害、盲聾、胃食道逆流症、運動不全などがあります」。サイモンくんもソーシャルディスタンスを守ろうとすれば、自らの健康や教育を犠牲にせざるを得ない。身の回りの世話も勉強も、そばでサポートしてくれる人に全面的に頼っている。「サイモンは目も見えませんし、耳も聞こえません。触覚で学習しています」とドダートさんは説明した。「こちらは周りの環境がつねに消毒されていると安心できる状態でないと。現状の学校再開プランは適切とは思えません」。さらに言えば、他の子供には効果的な予防対策も、サイモンくんには効果がないばかりか、危険な場合もある。「サイモンはマスクをずっと着けていられないので、介助者が1日中マスクを直すことになりますが、当然彼の顔にも触れることになります」とドダートさん。

サイモンくんの同級生にも、学校に戻らない生徒が1人いる。一緒に数時間自宅学習をしてみては、という意見も上がった。最初はそれさえも、危険すぎるように思えた。「反射的に、いやだと思いました」とドダートさん。「サイモンに豊かな生活を送らせてあげることをつねに重視してきましたが、息子の健康管理にも目を光らせています。今回のパンデミックで、これまで以上に警戒を強めるようになりました」。だが他の子供の親と話し合いをするうちに、ドダートさんもサイモンくんを同級生と定期的に交流させようかと考えるようになったという。「質のいい生活が決心する決め手になったと(他の親御さんが)言うのを聞いて、うちも前より少し気楽に“生活”するべきだ、と思えるようになりました」と言って彼女はこう付け加えた。「他の親御さんの意見にはいつも勉強させてもらっています」

子供を学校に戻すべきか親が葛藤する間、多くの学区が完全リモート学習に移行しつつあるが、学校側は特別支援学級の子供たち、とりわけ複雑な医学的問題の子供たちを取り残してはならない、と専門家は警告する。

そうした懸念を念頭に置きつつ、年少クラスや特別支援学級の学校再開を認める一方、他の生徒にはリモート学習を継続している学区もある。だが大部分はまだ計画すら立てられていない。「公的サービスをもっとも必要とする子供たちへのサービスの提供方法を見つけ出す必要があります。人生の大事な時期にサポートを受けられなかったがために、この先の人生が左右されるかもしれないのですから」とブランシェット博士も言う。「今回のパンデミックで我々はたくさんのことを学びました。だから私は、この問題もきっと解決できると思います」

from Rolling Stone US

Translated by Akiko Kato

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