重症心身障害児の親たちがコロナ禍で抱えるジレンマ

サービスの欠如は親の健康や精神にも影響を与えている

ラトガーズ大学の名誉教授で、教育大学院の学長を務めるワンダ・J・ブランシェット博士は、学習の遅れへの懸念はもっともだと言う。「児童が何もせずにいる期間が長ければ長いほど、学習遅れの可能性も高くなることが研究で分かっています」と博士は言う。「重度の発達障害児の場合、適切な指導がなければないほど、学習が遅れる可能性が高くなるのは当然です」

当然ながら、サービスの欠如は特別学級の生徒の親の健康や精神にも影響を及ぼしている。ある調査によると、定型発育児童の親の46%がパンデミック中に「かなり」ストレスを受けたと回答したが、たった1人で教師、介助者、従業員、活動家、セラピストの仕事をこなさねばならない特別学級の生徒の親はさらに大きなストレスを抱えているだろう。「親御さんは(パンデミック以前よりも)ずっと孤独を感じる、とおっしゃっています」と、児童神経学財団の理事兼CEO、エイミー・ブリン氏は言う。「我が子に基本的なニーズを受けさせるために、以前にもまして頑張らなくては、と感じているんです」

とはいえ親は、子供の学習遅れや自らの精神状態を懸念しつつ、障害によってはCOVID-19の感染リスクが高まることもある、という事実とも折り合いをつけなくてはならない。子供を学校に再び通わせるかどうかという問題は、ほぼすべての家庭がこうしたジレンマと向き合わねばならない。

サミーちゃんの友だちの中には一緒に遊んでいる子たちがいることはブフナーさんも知っているが、サミーちゃんを守るためにソーシャルディスタンスや外出自粛に関してはことのほか厳しい。仮に学校が再開した場合、一番心配なことは何かと尋ねたところ、社交的な場が極端に減った環境でサミーちゃんが有意義な友情を育めるかどうかが心配だ、とブフナーさんは答えた。「もちろんウイルスに感染することが一番心配です。でも私が心配なのは友達関係です」。とくにサミーちゃんの場合、一番仲の良かった友だちが12月に亡くなっているのでなおさらだ。「社会との隔絶が広がるのではないかと心配です」

学校再開の決定は、現地の感染率や学習遅れの度合い、各家庭の負担など、様々な要因をもとに各自の判断にゆだねられている。ベラちゃんの場合、COVID-19に感染する確率は極めて高い。数年前にも別のコロナウイルスとヒト-メタニューモウイルスに感染して入院したことがある。「あんなに具合が悪くなったのは初めてです。敗血症にかかって、呼吸不全に陥りました」とヨンダーさん。「息ができなくて苦しむ娘の姿と、娘を失うんじゃないかという恐怖は一生忘れないでしょう」。健康体の人でさえCOVID-19の症状は多種多様なため、万が一彼女が感染したときどんな症状が現れるのか、全く予想がつかない。

Translated by Akiko Kato

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