矢沢永吉バラードベスト 39曲全ての曲に手を加え直した理由を語る

いつの日か / 矢沢永吉

1994年の曲「いつの日か」。ドラマ『アリよさらば』の主題歌になっておりました。代表曲ですね。オリジナルとは相当違います。歌い直されたニューレコーディングver.です。しみじみとした感じが一層強くなってますね。矢沢さんのバラードの魅力は、狂おしさだと思ってるんです。センチメンタルな情感に浸るのではなくて、狂おしいまでの想いが伝わってくる。これはロックでもバラードでも同じだなと思ったりもしました。そして、このアルバムの音がいいなと思った答えが、今の矢沢さんのコメントの中にありましたね。音楽家・矢沢永吉の一端でした。



今流れているのは、後テーマ曲で竹内まりやさんの「静かな伝説(レジェンド)」。この曲に"語ってくれ 彼の生き様を”という歌詞がありましたが、こんなに生き様が人に影響を与えてきたのは矢沢さん以外はいないでしょうね。そんな足跡を来週以降もお聴きいただこうと思っております。

矢沢さんは、生き様そのものが音楽になっている人でしょう。高校を卒業してすぐに、卒業証書を破り捨てて上京してきた。横浜で列車を降りて、バンド活動を始めた。その頃のことは『成りあがり』という自伝で克明に語られております。青春のバイブルです。でも、考え方によってはそこだけがクローズアップされすぎているのではないか? と思いました。矢沢さんのインタビューを何度かやらせてもらったことがあるのですが、彼が何気にそういう話をしたことがあるんです。「『成りあがり』で音楽の話をもっとしておけばよかったかな? あれはあれでもちろんいいんだけど、ちょっと音楽の話足りなかったかな?」と、ふと呟かれたことがありました。そういう意味では、矢沢さんのバラードベストは、彼が屈指のメロディメイカー、シンガー、アレンジャーであるという、様々な音楽家の側面が刻まれているアルバムでもあると思います。1970年代、1980年代には活動の拠点が変わったりしたという話も少しありましたが、1980年代の矢沢さんがやってきたことは、アメリカ西海岸のAORと呼ばれている音楽を誰よりも自分で作ろうとして音に記録して体現している。そして、そういうミュージシャンと付き合ってきた人なんだ。ということを、来週以降でお話できたらと思っております。でも、来週は彼の言葉を借りるならイケイケの永ちゃんですよ(笑)。お楽しみに。



<INFORMATION>

田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
https://takehideki.exblog.jp

Rolling Stone Japan 編集部

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