ASKAが語る歌詞へのこだわり 過去・現在・未来がリンクする詩的な世界

「僕が「過去」って使うと、ソリッドになってしまうので(苦笑)」

―そんな風にうまくいっていない人や状況を単純に否定せず、しかも“新世界の地を踏んでいけ”と歌っています。単純な応援歌ではないのがASKAさんらしいです。

僕は世の中に向けて元気づけるということは考えてないんです。自分で自分に対してなんですよ。自分のことだから出だしの歌詞も、本当は“明日の話はいくらでもする だけど過去の話はしない”にしたかったんです。過去という言葉を使うことで、切れ味が出ると思ったんですよ。散文詩だったらOKだったんですけど、メロディに文字が乗らなかったんですよ。それで“明日の話はいくらでもする 昔の話もする”にしたんです。

―単語一つにも相当なこだわりが。

まぁ、僕が「過去」って使うと、ソリッドになってしまうので(苦笑)。それでも言葉としての切れ味は感じましたが、どうしてもメロディに入らなかったですね。

―そして9月25日配信になったのが「僕のwonderful world」。

この曲は歌詞にある<僕の腕にリボンをかけたような 光を見てた>という部分がベースになって出来た曲ですよ。ある日床に寝そべっていた時、伸ばした僕の腕にまるでリボンをかけたみたいに見えた光があったんです。昔の出来事なんだけどふと思い出して、今のこととして歌詞にしてみました。



―よくそんな何気ない景色を覚えてましたよね?

どこかにクラウドがあって、詞を書いている時にずっとそこにアクセスしているんだと思います。

―なぜその景色をこのタイミングに歌詞に?

世の中が混沌としている状況で、日常の中で温かくなれる歌を作りたかったんです。この曲が完成して聴かせた友人が「サッチモが今降りてきて新しい曲を歌ったみたい」って言ってくれたんだけど、正にそうで。what a wonderful worldだから。それを隠さず「僕のwonderful world」にしてみました。サッチモのあの世界観、黒人独特の口元で笑いながら歌う姿ってたまらないでしょ? 黒人には黒人の悲哀があって、黒人であるがためのいろんな背景があって。でもサッチモが「what a wonderful world」って歌った時のその沁み方たるやすごいじゃないですか。その人に訴えかけるものって。この時代だから訴えかけるものがあるんじゃないか、温かい気持ちになれるんじゃないかって。それであえて「what a wonderful world」よろしくフォービートであの辺の世界にしてみたわけです。

―すごく温かい気持ちになりました。しかもコロナ禍と並行してアメリカではBLM問題が再燃したタイミングでもあったので。

今のアメリカを見ていると、人種の問題にしても、宗教の問題にしても、経済の問題にしても、アメリカ連邦共和国になろうとしているとしか思えないですよね。アメリカ合衆国は無くなって、州政策によるアメリカ連邦共和国を掲げて、それがアメリカという合衆国を維持するっていう連邦共和国。ソビエトみたいになるんじゃないかと思ってしまうぐらいです。それの火種をあちこちで起こしているとしか思えないですよね。

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