ジョン・レノンとオノ・ヨーコの展覧会開幕、鑑賞前に知っておくべきエピソード

書籍や音源だけでは味わえない感動

他にも、ジブラルタルの挙式でジョンが着ていたピエール・カルダンの白いジャケットや、平和パフォーマンス「ベッドイン」でジョンが弾いていた(「平和を我らに」のミュージック・ビデオにも登場する)ギブソンのアコギ、1971年にボブ・グルーエンのポートレート撮影で着用した、「NEW YORK CITY」のロゴが入ったTシャツ(袖を自分で切り落としたもの)、ニューヨークはマディソン・スクエア・ガーデンで開催された「One To Oneコンサート」(1972年)でジョンが着用したミリタリーシャツなどが陳列されており、もはや「歴史上の出来事」となっているエピソードを、それにちなんだ「現物」と共に振り返る体験は、書籍や音源だけでは味わえない感動があった。

【画像】ジョンやヨーコの貴重な私物も展示されている(写真13点)

個人的に印象深かったのは、ニューヨークのヒルトン・ホテルの便せんに書かれた「Imagine」の手書きの歌詞と、ジョンが取得したグリーンカードの現物だ。特に後者は、71年にニューヨークに移住したジョンが、2度の国外退去を命じられながらも5年がかりでようやく手に入れた永住権の「証」であり、その長い苦難の歴史を思うと胸にこみ上げるものがあった。

他にも、ジョンが日本語を練習しているイラスト入りのスケッチブックや、西丸文也が撮影した軽井沢での家族写真で、ジョンとヨーコが着用していた洋服、専業主夫時代にジョンが使っていた「抱っこひも」など、日本初公開の展示物も並んでいた。

こうしてジョンとヨーコが出会ってから死別するまでの14年間を振り返ってみると、その活動は決して首尾一貫したものではない。時には著しく矛盾を孕むようなものもあり、激しい批判を浴びることも少なくなかった。

「信じるときはとことん信じる。でも、カメレオン体質なもんだから、そのとき一緒にいる人に影響されやすいんだ。立ち止まってよくよく考えてみると、アメリカ政府に戦いを挑むなんてどうかしていたと思う」(著名政治運動家たちと距離を置くようになったことについて語る1980年「Newsweek誌」のインタビュー)

ジョンもヨーコも決して聖人でもなければ人格者でもない。その時その時を並外れた集中力で懸命に生きながら、既成概念にとらわれず「ありのままの姿」をさらけ出してきた人間味溢れる表現者だ。『DOUBLE FANTASY – John & Yoko』を通じて知る、愛するということ、政治とアートの関係性、家族や子育てのあり方……等々、今なお私たちが抱えている問題について、自分たちを「メディア化」しながら真剣に取り組んだ2人の波乱万丈な道のりに、ただただ心を揺さぶられずにはいられなかった。

DOUBLE FANTASY - John & Yoko
 ~ 2021年1月11日(月・祝)
場所:ソニーミュージック六本木ミュージアム(東京都港区六本木5-6-20)
主催:株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント / 株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ
メディアパートナー:朝日新聞社
オフィシャルサイト: https://doublefantasy.co.jp/

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