Koji Nakamuraが作り上げた五感に響く空間

第二部もライブセッションからスタート。暗転した場内にハウリングした音が響き始めるとナカコーが登場。何よりも特筆すべきは、第一部では見られなかった、彼のギターを手に持った姿だろう。キャンドルに囲まれた中で、足元のエフェクトボードを何度も踏む様子からも分かるように、深くエフェクトのかかったギターサウンドと音数の少なさは、ロックバンドに見られるような演奏の主役としてのギターではない。ギターアンプからのハウリングがずっと共鳴したり、アンビエントな空間を構成する一要素としてのサウンドを鳴らしていた。指で弾くアタック音や、低音弦を細かく弾き丸みのあるフレーズなどいくつものサウンドをその場で幻想的に重ねていく。どこまでが打ち込みの音で、どこまでがギターの音なのか分からないほどに溶け合っていく。このようにアンビエントなサウンドは、緑に光が差し込むようなVJや深海のような深い青のVJでは自然の神秘さを表したヒーリングサウンドにも聴こえ、赤や黒などダークな世界観の色合いのVJの前では、不穏な音楽にも聞こえる。ここでも視覚と聴覚の両方が組み合わさって曲の世界観を構築していることを痛感した。ギターアンプから出る揺らめいたハウリングで余韻を響かせつつ、ライブセッションは幕を下ろした。



少しの間があってトークセッションが始まる。愛煙家であることから、音楽製作中でも手放さないというタバコにまつわる話から、地元・青森県から東京で音楽を活動する経緯や現在の活動と幅広く話が触れられる。青森からミュージシャンが出ることについては、東北は孤立していて関西のようなつながりのあるカルチャーが少ない分、個性が強い表現をするのではないかと話し、青森という独自の音楽シーンを分析して話した。また、アンビエントやノイズ的な音楽についても、スーパーカーを始める前からナカコー自身はノイズサウンドを録っており、日本のノイズシーンが海外でも評価されていたことなどにも触れ、彼の音楽の支柱の一つにはノイズサウンドが根深くあったことが伺える。また、昨今のサブスク配信の中での音楽との出会い方の変化や、自身の作品背景についても言及した。最後にコロナ禍の中でも自分の音楽活動のやり方を変えることはせず、普通の日常に戻っていけばいいなと思います、とイベントを締め括った。

本イベントでは、あの空間に元から流れているかのような心地の良い音楽と、暗闇の中で揺らめくキャンドルの彩りは神々しささえも感じる空気感を作り上げた。新型コロナウイルスの影響でソーシャルディスタンスを保った人数制限があったものの、それが更に空間的な余裕も感じさせた。まさに「THE CHILLOUT TIME」というタイトル通り、緊縮した昨今の社会の閉塞感から解放される、居心地の良さを感じたイベントであった。



<イベント情報>

Rolling Stone Japan presents
「Coffee&Cigarettes Talk&Live」

2020年9月5日(土)CUBE六本木
第1部 14:30開場/15:30スタート/17:00終了
第2部 17:30開場/18:30スタート/20:00終了

Candle Decolation:AKARIYA
VJ:Sawano Naoki
PA:Kazuaki Noguchi(THE LAWED HERTZ)

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