ボブ・ディランの魅力を再発見、珠玉のカバー15選

ボブ・ディラン


アル・クーパー、スティーヴン・スティルス「悲しみは果てしなく」

ときに偉大なカバーは、オリジナルの意味や雰囲気を完全にかなぐり捨てる。ここに挙げた意味不明の、それでいて底抜けに明るい曲がその好例だ。1968年、アル・クーパーがディランのバックバンド仲間だったマイク・ブルームフィールド、ハーヴェイ・ブルックスらと制作したアルバム『スーパー・セッション』のB面に収録された代表作。ブルームフィールドが制作から身を引いたため、スティーヴン・スティルスがリードギターを担当している。ディランの中でも1、2を争う切ないブルースを、2人は荒唐無稽なロックンロール・パーティへと変えた。スティルスがソロパートをかき鳴らし、どういうわけかクーパーがいきなり「ナ・ナ・ナ・ナ・イエー!」と叫び、とにかく楽しい。この2人はハメの外し方を心得ている。



ベティ・ラヴェット「悲しきベイブ」

いまや名作となった1964年のこの曲で、ディランは深い関係を求める女性に(あるいは抗議運動の救世主で居続けてほしいと望む全米のフォークファンに)別れを告げた。これは若い男性の歌、新たなスタートを切ろうとする青年の歌。2018年のディランのカバーアルバム『Things Have Changed』でも圧倒的な存在感を放っている。ソウルの偉人ベティ・ラヴェットがこの曲に人生経験を反映させたことで視点が変わり、さんざん辛い目に遭ってきたゆえに悲しい結末を予測する人物の曲になった。



ゼム「イッツ・オール・オーバー・ナウ、ベイビー・ブルー」

1966年、若きヴァン・モリソンはベルファストで結成したバンドとともに、あらん限りの力でこの曲をカバーした。オリジナルは別離の痛みを美しい言葉の羅列で包み込んでいたが、ヴァンはそうしたセンチメンタルな絆創膏を引きはがした。「ハイウェイはギャンブラーのもの、感覚を研ぎ澄ませ」と彼が叫ぶとき、脈打つ自らの心臓を抉り出しているかのようだ。他のバンドメンバーも素晴らしい。独自のベースラインとオルガンパートは、30年後にベックが『オディレイ』のシングル「ジャック・アス」で採用している。


Translated by Akiko Kato

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