田中宗一郎が語る、オンラインカルチャーが駆動したポップ音楽の20年史と、パンデミック以降の音楽文化の可能性

トラヴィス・スコット



パンデミックは格差を是正する起爆剤となり得るのか?

この20年間は、エンドユーザー目線で見れば、オンラインとオフラインそれぞれの現場における体験や消費の選択肢が一気に増えたエキサイティングな状況でした。ところが、2020年春のCOVID-19の世界的なパンデミックによって、この20年で築き上げられた特に興行面におけるシステムが瓦解することになった。実際、産業的には大打撃を受けています。ただ誤解を恐れずに言うなら、これは文化的な側面からは新たなチャンスとも言えるわけです。自分でもかなり夢見がちなことを言ってるなとは思うんですけど(苦笑)。

ただ少なくとも、前述の格差という部分を是正する起爆剤になるかもしれない。そもそも格差というのは、資本主義でも何でもいいけど、ゲームの規則が固定化してしまい、そこからの抜け道が見出せないスタティックな構造が引き起こすものなわけですから。

繰り返しになりますが、産業と文化は不可分。そもそも2010年代の音楽の象徴とも言えるオンラインカルチャーの代表格――SoundcloudやDatPiffを介して発展したミックステープカルチャーは、アトランタやシカゴのラッパーたちのような持たざる者が既存の産業から完全に逸脱したオルタナティヴな場所を構築することを可能にしたものだったわけです。

ただ、その後、法整備が進んでいって、それがストリーミングサービスに回収され、産業として確立されていった2010年代の終わりと共にパンデミックが起こって、無理やりルールが書き換えられることになった。そして、これからの時代は「オンライン」「バーチャル」がビジネスのキーワードだと叫ばれるようになった。

でも、それというのは、かつては革命的な事件だったものがもはや既得権益を強化するための道具に堕してしまったと言えるかもしれない。世界中の社会革命の後に起こってきたのと同じことがここでも起こったわけです。少なくともビッグネームとミドルボディとの格差を助長せざるを得ないメカニズムを持っているのは間違いないですよね。

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