THE HEARTLANDの解散と佐野元春&The Hobo King Bandの歩み



田家:先ほどはしつこく幻想、幻ということについてお聴きしたのは「ザ・サークル」の歌詞があったからでもありまして。佐野さんご自身が『Sweet16』と『The Circle』は対のようなアルバムだとお書きになっていたので、幻想ということについてお伺いしたのですが。"探していた自由はもうないのさ"とか、衝撃的な歌詞でしたね。

佐野:まあね。自分を否定しないと前に進めないから。そこがメインポイントではないけれど。

田家:(笑)。1980年代には本当の真実が掴めるまでって歌われたわけで、聴いていた人の中にはそういう歌詞が色濃く残っていたりしますよね。

佐野:そうした心境のリリックを通じて、ファンやリスナーの先入観を壊したい。それが僕のやりたかったことだ。

田家:『Sweet16』はピュアなロックンロールアルバムに近い。『The Circle』はもっとソウル、R&Bに寄っている。

佐野:言ってみればそうだね。ソウル、R&B、ジャズ。

田家:それが対になってるという意味でもあるんでしょうか?

佐野:この2枚のアルバムで自分の雑多な音楽的傾向を知ってもらえたらなあ、という気持ち。

田家:『The Circle』はバンドTHE HEARTLANDとの最後のオリジナルアルバムということですが、その時のことはどう思われていますか?

佐野:その日が来たんだなという感じ。

田家:やり尽くした感じがあったということでしょうか?

佐野:そうだね。バンドはそれまで何度かクリエイティブなピークを経験して、あとは潔く辞めるか、惰性的に続けていくかどっちかだというとき。僕らは前者を選んだ。

田家:この二枚のアルバムでバンドの持てる力を出し切った?

佐野:バンドの皆もそう思ったんじゃないかな。

田家:この「ザ・サークル」の歌詞の中に"少しだけやり方を変えてみるのさ"という部分もあるのですが、それはメインポイントではない?

佐野:ちょっとメインポイントに近いね(笑)。

田家:そうやって作ったのが次の1996年のアルバム『Fruits』になるわけです。このアルバムでは第一次佐野元春&The Hobo King Bandが結成、ベース井上富雄さん、ドラム小田原豊さん、キーボードDr.kyOnさんが参加していたわけですね。アルバム『Fruits』については次に詳しくお訊きしましょう。

Rolling Stone Japan 編集部

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