DATSが「時代観」とともに語る、型にはめることの面白さ

「小さいところから入る方が、意外といろんな解釈が生まれたりする」

―個人的には、ここで新しい何かを創造することでクリエイターがポストコロナ社会の扉を開いてくれることを期待しているんです。

大井:それこそ60年代と照らし合わせると、今は「若者文化はこれです」って言えない世界になってるじゃないですか。例えば一つのムーブメントにその世代全員が熱狂するみたいなことってたぶんもう起こらないと思うんですよ。今この時代はこれだ!って60年代では簡単に言えてたことが、今では何を拾っても、それに全員が影響されてるわけではないっていうジレンマに陥ってると思うんですよね。何を取っても一部の人の楽しみにしかならない。僕はそう思っているんです。

―同感です。

大井:どんなトピックを取り上げても、“それに影響されている”っていう程度の表し方しかますます出来なくなっていくはずなんですよ。だから、一つの社会的なムーブメントを一括りにして、「これです!」みたいに言うのはむしろ乱暴だと思ってて。それは音楽を作る側にも言えることで。僕ら今回の音源を作るにあたって、今の社会とかを切り取って、パッと表現する、パッと端的に言い表わすみたいなことはしなかったってことなんですよね。インディの最後に出した『Application』ってアルバムって、リリースした時に全盛だったと思われるガジェット類の名前を曲名にしたんです。でも今回はその時代のそのポイントをバシッと切り取るみたいなことは僕らはしなくなったんだと思います。だから60年代も2020年もこれからの時代もおそらく全時代で言えるであろう<School>っていう漠然とした、けど強度のあるキーワードとか標語を見つけるっていうことに僕らはしたんです。全部をひとまとめにして言い表すことっていかに難しいか。<School>ぐらい薄まった単語じゃないと、全員に該当するものって今後ないだろうなっていう感じです。

MONJOE:作詞においても、自分らが今まで作ってきた作品は、やっぱりソーシャルイシューの描写みたいことを割と重視していたんです。で、まさに今の(大井)一彌の話になるんですけど、今回の作品においては、作詞面でいえば、個人的な日常における経験や些細な出来事、自分の思いや感情の変化とか、そういうパーソナルなことを元に歌詞を書いたんです。意図せずとも出来上がってあらためて聴いてみると、普遍的でもあるなと思うんですよね。普遍的なものから入らなくても、パーソナルなものから入っても普遍的なものって語れるなと思ったんです。そういう意味で音的にも、<School>って一つの型を自分たちで当てはめたってところに繋がるなと思っていて。型にはめるみたいに、小さいところから入る方が、意外といろんな解釈が生まれたりとか大きく見れるなって。そういう面白さに、いま自分らは価値を見出しているフェーズなのかなと思うんですよね。



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『School』
DATS
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