レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの“あの曲”に仕掛けられたリズム展開 鳥居真道が考察

「Killing In The Name」のリズムのおもしろさはここで終わりというわけではありません。例の「ナゲット割って父ちゃん」の箇所について言及しておきたい。

ところで、あの空耳の映像は何度見ても本当に秀逸だと思います。「ダダッダダン」というキメの演奏を受け、ザックが「Now you do what they told ya」と言うわけですが、映像においては息子が「ナゲット割って父ちゃん」と言って父親にナゲットを手渡します。父親はキメの最後の音、「ダダッダダン」の「ダン」でナゲットを割ります。別に息子は父親に指示を出すだけでも良かったにも関わらず、ひとつずつ手渡していきます。これが重要。この手渡しという行為は、曲のキメとボーカルのコール&レスポンス構造に対応したものとなっています。音楽におけるコール&レスポンスの役割がただの指示ではなく応酬であることがうまく映像化できている。

これは自説ですが、ファンク的なアンサンブルのコール&レスポンス構造が機械仕掛けのように構築されたものだと考えています。これを機能させるには、それぞれが然るべきタイミングで音を出すことだけでは十分ではなく、ナゲットを手渡すというようなプレーヤー同士のやり取りが重要となります。あくまで共同作業であり、自分の行為がアンサンブルの中でどのように機能しているのか意識する必要があります。つまり交歓によって機械を機能させるということです。父と息子のやり取りはそんなことを改めて考える契機を与えてくれたのでした。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE