レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの“あの曲”に仕掛けられたリズム展開 鳥居真道が考察

続いてイントロ4。再び2拍3連が現れます。今度はバンド全体によるキメっぽい演奏となっています。ここに至るまでテンポ自体は変わっていません。当時がプロデューサーがクリックを使わずに一発録りしたと証言している通り、演奏が走ったりセクションの変わり目でテンポが変わったりということはあります。しかし、この曲を演奏する際に4分のクリックを聴きながら演奏することは可能です。ここまでは。問題はこの後のセクション。

2拍3連のキメの後、ブレイクがあり、ここでようやくザック・デラロッチャの登場です。「Killing in the name of」と発した後に展開される演奏はこれまでと異なったテンポです。曲のど頭から手拍子しながら聴き進めると、ここで手拍子が合わなくなるはずので試しに実践してみてください。

BPMを計測するとここで115ぐらいから172に上がっています。「え、速くなってないでしょ?」と思った方は正しい。BPM172に上がっていますがハーフタイム的な感覚を伴った演奏なので実質115から86に下がったとも言えます。

ここで何を根拠に彼らは新たなテンポを召喚しているのか? という問いが発生します。気合?阿吽の呼吸?

イントロ2の2拍3連について言及した箇所でこれを6/8拍子と解釈できると言いました。彼らはイントロ4においては2拍3連を6/8拍子と解釈しています。そして、6/8拍子における8分音符の長さを基準として新たな4/4拍子のテンポ設定を行っていると考えられます。2拍3連のキメから新たなセクションに突入する箇所をリズム譜で表すとわかりやすいかもしれません。

|X・・X・・|X・・X・・|X・・X・・|X・・X・・・|
|X・・・・・・・|X・・・・・・・|X・・・・・・・|X・・・・・・・|

このリズム譜の最小単位は8分音符となっています。ザックの「Killing / in the / name / of」という4つに分けられた音をそれぞれ8分音符だと捉えると、これが次の演奏のカウントとして機能していることがわかるかと思います。補足すると、6/8拍子のお尻に8分音符を付け足さなくてもスムーズに次のセクションに移行することは可能ではあります。

ピザを例に出したりしながら、さんざん1小節を基本の単位としてそれを切り分けていくことで細かい単位を設定していくという話をしたわけですが、ここで見ている手法はそれとは逆の考えで細かい音符を基準に新たな拍子を設定するというものです。こうしたテクニックはメトリック・モジュレーションと呼ばれています。

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