美しく情熱的なダンサーとニコラス・ジャーの音楽に魅了される衝撃作『エマ、愛の罠』、監督が語る制作秘話

―非常に斬新で衝撃的なラストを迎える、大変面白い作品でした。本作の音楽をニコラス・ジャーに依頼したのはなぜですか?

ニコラスは素晴らしい音楽家で、何年も前から僕が尊敬しているアーティストの一人だったんだ。ニコラスは、チリ人だけど、チリに住んでないから、ずっと音楽は聴いていたけど、一度も会ったことはなくて、今回初めて一緒に仕事をしたよ。

僕が電話をして、彼に映画の話をしたら、とても興味を持ってくれたんだ。本当に幸運だったと思うよ。「音楽」が、この映画にとっては、ガイドであり、アイデンティティであり、それらを決定づけるものだから、普段映画を撮るときは、音楽は後付けなんだけど、この映画に関していうと、撮影前と、撮影中にもニコラスはずっと音楽を作ってくれていたから、音楽を聴きなが撮影を進めたんだ。カメラを回しながら聴いていたから、音楽のリズム、トーンや雰囲気を表現できたのだと思うよ。そういう意味でも、普通の映画とは違った撮影現場だったね。

そして、この作品は、メロドラマ、音楽、ビデオクリップ、スリラーという多くの要素がある。全てのジャンルが混ざり合った映画にできたのも、音楽のおかげだったと思う。


Photo by Fabula, Santiago de Chile, 2019

-ニコラス氏に楽曲を制作する上でリクエストしたことはどんなことですか?

一番初めに音楽性についてのアイデアは伝えたんだ。その後、お互いにアイデアを出し合いながら、録音を重ね、共同作業で楽曲制作をしていった感じかな。

―前半のコンテンポラリーダンスシーンのアンビエントな楽曲はとても美しく、映像美とともに観入ってしまいました。途中のレゲトンパーティーのシーンも、レゲトンサウンドとアンビエントなエレクロトサウンドのマッチングが素晴らしかったです。本作で音楽での演出でこだわった部分を教えてください。

ニコラスはチリに住んでいないけど、チンチローネ(チリの伝統的な太鼓とシンバルの楽器)とパーカッションをベースに、チリで初めに録音をして、その後でニコラスがエレクトロニカとかアンビエントサウンドを付け足していき、最終的にレゲトンに仕上げて行ったんだ。従来のレゲトンサウンドではなくて、ヒップホップ、トラップ、エレクトロ、アンビエントなど、色々な音が交じり合った新しい“レゲトン性のあるもの”を作ったんだ。この映画の中の音楽はエレクトロニカなんだけど、虹の様に色々な要素がある。そういうスタイルが“パンク”なのかなと思っているよ。


Photo by Fabula, Santiago de Chile, 2019


パブロ·ラライン監督(左)、主演のマリアーナ・ディ・ジローラモ(中)、ガエル・ガルシア・ベルナル(右)

-本作は、カルチャー、モラル、セクシャリティ、などすべての概念を覆す、パンク・ロックムービーだと思います。本作を製作する上で、いちばんこだわった部分を教えてください


映画を創るときに一番大切にしているのは、人々がそれぞれ違う意見を持つこと。ダンスや音楽が良かったと思ってくれる人もいれば、道徳がない、モラルがないと思う人もいる。でもこれって、ただ一人一人が感じる人間的なことだよね。映画の中で男性が女性を誘惑するのって普通だし、女性が自分から男性、女性を誘惑すると非道徳だというような拒否反応が出てくる。そういった個々の意見を知りたいというところが、こだわりとしている部分だったかな。

-日本のアーティストで好きなアーティストは?

日本の音楽シーンはあまり詳しくないから、お勧めのアーティストを教えて!

【動画予告編】『エマ、愛の罠』

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