ちゃんみなが魅せた、一発撮りドラマ仕立てのオンラインライブ

さて、いくつかのインタビューにおいて、ちゃんみなは、『Angel』が以前とは明確に異なる手法で制作されたと語っている。これまでは、起きた出来事を俯瞰して、全体像を把握した上でひとつの感情に落とし込んで楽曲に昇華させていた。しかし『Angel』では、彼女は出来事の只中にいる。それゆえ対象との距離が近視眼的なまでに近い。制作直後は、自分でも説明が追いつかないほどだったという。言い換えれば、「Angel」では、監督目線からプレイヤー目線へと変更されて制作されたわけだ。

プレイヤー目線という考え方は、今回の配信方法と似ている。俯瞰ではなくカメラという操作された目線で見せること、なおかつ時にはセルフィーも使うほどの至近距離で撮影すること。これらの方法によって、視聴者は、ステージから離れたフロアで全体像を見るのではなく、ちゃんみなとダンサーたちが繰り広げる物語の只中に放り込まれ、出来事をともに経験している感覚を味わう。その結果、ライブとはまた違った種類の臨場感と一体感が生まれる(同時に、曲によっては複数のカメラで細かくカットを割り、ドローンによる空撮で全体像を見せるカットを挟むなど、ひとつの映像作品としてのバランスにも細かい注意が払われていた)。

そう考えると、今回の長編MV風オンラインライブという配信方法は、『Angel』が生まれた時点ですでにちゃんみなの頭の中に構想されていたのかもしれない。

コロナ以降、多くのアーティストがオンラインライブに舵を切りつつあるが、今回の試みは、そうした流れの中で新たな選択肢を提示したと言える。

しかし、この配信は、具体的にどう定義付けたら良いのだろうか? ライブだったのか、MVだったのか、あるいは音楽映画だったのか? この問いに答えを出せる人はいるだろうか。ひょっとすると、問い自体が無意味なのかもしれない。ちゃんみなは、それらの垣根を一気に飛び越えてしまった。

文:山田宗太朗
撮影:Kouichi Nakazawa



<ライブ情報>

ちゃんみな
「THE PRINCESS PROJECT - In The Screen」

2020年9月27日(日)

=セットリスト=
1. As Hell
2. Picky
3.ルーシー
4. Rainy Friday
5. Very Nice To Meet You
6. Never Grow Up
7. ボイスメモ No.5
8. Angel

リンク:https://CHANMINA.lnk.to/OnlineLive2020
※2020年10月4日23時59分までアーカイブ配信中。

ちゃんみな オフィシャルサイト:http://chanmina.com/


Rolling Stone Japan 編集部

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