パクチー、リナ・サワヤマ、もっと愛されるためにー「コロムビアに移ってからこれでもかというぐらい大事にしてもらえて幸せです」というツイートもありました。ラブサマ:はい、すごい大事にしてもらってます。
ーとなると、このアルバムをちゃんと売らなければいけない。ラブサマ:たしかに。どうしたら売れるんですかね?
ーこのインタビューを読んで、「アルバムを聴きたい!」と思わせるようにするにはどうしたらいいのかっていうことですよね。ラブサマ:そうですよね。今の私にはもう考えるキャパがないな……。
ーとりあえず、人間的な魅力と音楽的な魅力は伝わると思うんですよね。聴いてもらえば曲が良いことはわかるし、Twitterなりインタビューなりを読めば一筋縄でいかない人なのもわかるし。ラブサマ:でも、私のこういう性格ってパクチーみたいな感じなので。
ーTwitterでも書いてましたね。「癖が強くて好きな人はすごい好きだけど苦手な人はほんとに食べられないし、なかなか売ってない」って。ラブサマ:はい。
ーそもそもラブサマちゃんは、世間一般に広く愛されたいんですか?ラブサマ:あははは(笑)。えーっとですね……広く愛されるということはただ消費されることにもなりそうだし、自分のテリトリーから大きく外れている人たちに遊ばれるような感じになったら悲しくなったりしそうだから、広く愛されなくてもいいかな?と思っていたんですよ。そんな野望で音楽やってるわけではないので。私の夢がボチボチ叶うような規模感でやれたらいいかなって考えてたんです。フジロックのWHITE STAGEに出られるおばあちゃんになるとか。
ー出るのはおばあちゃんになってからでいいんですか(笑)。
ラブサマ:おばあちゃんになっても音楽をやり続けて、聴いてくれる人がいて、周りの人に損をさせないぐらいにするとか。それぐらいの規模感でいいかなって思ってたんです。でもなんか、音楽産業が儲からないっぽいので、ちゃんと裾野を拡げておかないと将来的に困ったりするかもなーとか思ったりもして。あとやっぱり、コロムビアの人がなんか好きになっちゃったので、その人達になるべくオイシイ思いをさせてあげたいと思ったら、がんばりたい気持ちもちょっと出てきちゃいました。
―いいですね、それ。ラブサマ:あとは最初に話したように、音楽を続けていく気持ちが消えそうだった時期があるんですけど、その時期に、音楽を作ること自体も楽しくないと思ったり、それまで自分がやってきたことが私にとって無意味だったかもしれないと思い始めてきてしまって。でも今まで自分が全力投球してきたものが無意味だったと認めるのは辛いじゃないですか。なので、別の意味みたいなものを探してみたんです。「自分が満足できる音源を作るのが楽しい」以外の音楽制作の意義ってあるのかな?と。そういう意義を考えだすと、人は数字に頼るんだなって思ったんですよね。もし自分が満足してなかった曲だとしても、全米チャート1位とか獲ったら、それはもう結果として表れてるじゃないですか。世の中や自分自身を納得させるものとして、数字ってすごく分かりやすいから。
ーオリコン1位とかですね。ラブサマ:そうそう。実際に起こる可能性はゼロに近いと思うけど、私がそういう数字を稼ぐことの気持ちよさとか、圧倒的な力を持っているような錯覚の気持ち良さをもし知ってしまって、それに病みつきになってしまったら際限なくなると思うんですよね。「日本一はわかった、でも日本一になったからって(ウィーザーの)リヴァース・クオモが聴いてくれると思うか? 違うだろ! 俺は海外でも絶対に売れてやる!」みたいな。
ーもっともっと、となっていく。ラブサマ:そういう「もっともっと性」が自分の中にあるのはわかっているので。今はその貪欲さが「バカ売れしたい」という方向に向いていないし、今後も向かないと思いますが、もし「バカ売れ」に熱を上げるようになったら、どんな感じになるのかなとか、たまに考えてみたりもするんですよ。レッドカーペットを歩いてる自分の姿とか。グラミー賞みたいな感じでタキシードとか着てる人たちの横で、私がアルバムのテーマカラーのドレスを着てるみたいな(笑)。
ーダハハハハ! 夢は大きいんですね(笑)。ラブサマ:まあ、今はギャグみたいなノリで言ってますし、実際にそこまで望んではいないんですよ。「そうなったらウケるよね」っていうくらいで。でも、
リナ・サワヤマさんっていらっしゃるじゃないですか。彼女は
インタビューで「スタジアムでコンサートを行うようになるまでにはしばらくかかるだろうなんて今は冗談を言ってるけど、世界中の人に自分の音楽を聴いてほしいし、いつかは実現するでしょう」とおっしゃっていて。ご本人のアルバムも、本当にそう信じているんだろうなっていうのが伝わってくる堂々とした音像なんですよね。スタジアムでのライブで客がシンガロングしている様が目に浮かぶというか……。私にはそういう自信がないので感動しちゃったし、生き様がカッコイイと思っちゃって。
―それが言えるのは強いですよね。ラブサマ:なので、数字を獲るとか、広く愛されることを目指す姿勢に拒否感はないですね。もしも自分のモードが変わって、スタジアムで歌いたいと思う何かしらのトリガーを引いたらそうなるのかもしれない。でも今のところは、そこまでみんなに愛されたいとは思ってないですね。
Photo by Kana Tarumiーパクチーのままで売れたいんですか?ラブサマ:うーん、でも4年前の自分はもっとパクチーだったなって思うんですよ。数年前にフリーランスになったことで窮地に立たされたんです。たくさん傷ついたし、精神的にも経済的にもこれからどうしようみたいな感じで。フリーになった私に仕事をくれる人なんていないと思ってたんですよ。でも、私の所属先やステータスとかを見ずに、「ラブリーサマーちゃんが好きなんです」って仕事をくれる人とか、一緒に演奏してくれる人とか、ただ友達になってくれる人とか。そういう人がいるんだってことをその時期に知って。
やっぱりフリーランスって、自分で全部やらなきゃいけないじゃないですか。曲作りもそうだし、スタジオの予約とか工場への発注とか。音楽をやることの大変さがよくわかりましたね。それまでに自分を助けてくれた人が、どれだけの時間や労力を割いて私に接してくれたのか考えたら、本当にありがとうっていう気持ちが強くなってきて。自分と関わってくれている人もそうだし、何かしら仕事をしてちゃんと生きてる人たちで構成されている社会がすごいと思って。親の金で大学に行ってた人間だけど、考え方がちょっと変わってきたんですよ。だから今の性格は、パクチーを格段に超えてきていると思います。
ー日本人の口に合わせる調理方法を学んだ?ラブサマ:いや、口に合わせるというよりも……。どうしても嫌いとか思われるところはあると思うんです。どんなにやさしくなっても。でも、私がもっといい人間になるコツを考えていった結果、そんなにみんなから唾棄されるような存在や人間性では徐々になくなってきているのかなって。それこそ、リナ・サワヤマさんくらいのことを考えられるレベルにもし到達したら、かなり人格者になっているような気がするんですけど。その頃にはもう、パクチーとは言われていないような気がします(笑)。
ーもっと万人の口に合う食材になっている。ラブサマ:そうそう。万人は不可能ですけど、ほとんどの人は「ちょっと変な味がするけど、これ好きかも」ってなるような、悪い感じのしない食材になってるんじゃないかな。
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2020年12月15日(火)
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出演:ラブリーサマーちゃん / セカイイチ / ayutthaya / wash?/ NENGU
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