EDM業界マネージメントのプロフェッショナルが語る、ポスト・コロナ時代|音楽ビジネスストーリー

ローリングストーン誌ビジネス連載「AT WORK」: 「背水の陣を敷いてはいけない。アシスタントであれ、インターンであれ、社長であれ、すべての人に敬意を表しなさい」と、語るステファニー・ラフェーラ氏。(Photo by Lily Chan)Courtesy of Stephanie LaFera


ーEDMアーティストやDJは、真っ先にライブストリーミングを実施した印象があるのですが、それはなぜでしょう?

EDMコミュニティは、当時すでに(ライブストリーミングを)実践していました。だからこそ、ここまで自然に感じられるのです。ライブストリーミングに全力で取り組むのは、私たちのアーティストにとってごく自然なことなのです。彼らは、日頃からTwitch(訳注:Amazonが提供しているライブストリーミング・プラットフォーム)で配信していましたから。私たちにとって重要なのは、アーティストのニーズと彼らが欲しているものを理解することです。すべてのアーティストがライブストリーミングを行う環境で極めてテクニカルな照明やビジュアルを使用したがるとは限りません。そこで私たちは、顧客が心地良いと感じるものや、どのようにしてオーディエンスの前に登場したいかを考案し、収益化する、あるいはチャリティに参加したり、特別な大義を掲げる団体に寄付したりする方法を探す手助けをします。

ーEDMイベントの再開は、ロックやヒップホップといったほかの音楽ジャンルと比べてより困難だと思いますか?

フェスかイベントかに限らず、ナイトクラブなどを営む事業者たちに話を聞くと、ちょっとした差はあります。私は読心術者ではありませんが、ライブ会場で行われるチケット制のイベントのほうが、完全にオープンなダンスフロアが特徴のナイトクラブと比べてソーシャルディスタンスなどの措置を取り入れやすいと思います。

EDMにとってのメリットは、私たちが抱えるアーティストが車や飛行機での移動により積極的だということです。ギターテクニシャンを雇う必要もありませんし、クルーを集めて移動する必要もありません。ゴーサインさえ出れば、私たちのほうが早くスタートを切れるのです。

ー若い頃からレイブやEDMイベントに足を運ばれたそうですが、現場で働くことで見方は変わりましたか?

13歳の頃から音楽を聴き、愛してきました。幕を開けて、その後ろにあるものを見たからと言って、自分が変わったとは思っていません。ダンスフロアにいるときの感覚はいまも大好きです。まるでひとつの大きなグループにハグされているような気分です。音楽とオーディエンスが与えてくれるエネルギーと一体感が心に響くんです。いまの役割のおかげで、人々に出会い、目の前のことを見失わずにいられます。これはビジネスですが、生粋のカルチャーを扱うビジネスでもあります。冗談のつもりで、私をダンスフロアにひきずっていってと言っています。こうしたことの一員でいられるのが本当にうれしくて、いまも積極的に外出します。お気に入りのアーティストがいればチケット代を払います。多かれ少なかれ、これはレイブ好きの昔の自分への回帰でもあるのです。

ーパンデミック前は、相変わらず深夜のイベントにも参加されていたのですか?

転職前は、ギャランティスのツアーが終盤に差し掛かっていて、かなり遅い時間までライブがありました。でも、別に構いませんでした。私にとってライブはオマケのようなものですから。ライブは、エネルギーと興奮を感じるためにあるんです。いまはそれが叶わないのは、ライブエンターテイメント業界で働くすべての人の課題です。でも、6歳の娘と『トゥモローランド』を観ながらキッチンの周りを飛んだり跳ねたりし、その場の雰囲気を楽しもうともしました。私たちは、それぞれの方法を模索しているんです。でも、仕事であれプライベートであれ、ライブには行きます。家から出てライブとダンスを思いっきり楽しみたいと思わせてくれるアーティストがたくさんいるんです。

ー若い頃にEDMカルチャーを経験しなかった音楽エグゼクティブにもこのビジネスは可能だと思いますか?

いつも言うのですが、これは生まれつきのもので、取り払うことはできません。私たちが「EDMブーム」と呼んでいる、ラスベガスでのビジネスの全盛期、EDCラスベガスの開催、北米中の人たちがEDMに熱狂した頃のEDM関係者は、本当の意味でEDMとの文化的な結びつきを感じていませんでした。ダンスミュージック業界には誰もが参入する余地はありますが、EDMを愛し、EDMに人生を捧げる中心となる集団は変わらないと思います。私は、大金が稼げるから、あるいは企業とのビッグなビジネスをしている人たちを見てこの業界に足を踏み入れたわけではありません。ただ、心底ダンスミュージックが好きだったからです。その気持ちはずっと変わらないと思います。WMEのアシスタントにも「どのアーティストが好き?」と訊いています。誰がEDM熱狂的なファンで、どんなアーティストを聴いているかを知りたいんです。それがEDMでなくても構いません。とにかく、あなたは誰にハマってるの? 音楽好きではないなら、それはまた別の話になってしまいますね。

ーイベントの規模はますます大きくなり、企業という要素も加わるようになりました。でも、EDMの独壇場とまではいかないようです。

なぜそうかははっきり言えないのですが、パーティが夜7時に始まり、朝6時に終わるとしたら、大人数のグループを排除する可能性が高いです。開催が深夜というだけで、夜8時に始まって夜11時に終わり、夜中には寝られるようなコンサートが好きな人たちには敬遠されるかもしれません。なかには、この時間帯にEDMライブやフェスが行われる場合もあります。でも、そうしたイベントに参加するアーティストの多くは、イベントが終わっても朝4時まで演奏を続けるでしょう。そのほうが楽しいからです。

ー音楽エグゼクティブとして、いままでに得た最良のアドバイスは?

背水の陣を敷いてはいけない。アシスタントであれ、インターンであれ、社長であれ、すべての人に敬意を表しなさい。かなり若い頃にこうしたことを教わりました。とても役に立っています。私は、可能な限りの品位を持ってこの業界を歩んでいきたいです。アーティストたちのために最高の取引を行い、この仕事においてナンバー1になりたいです。それと同時に、人々に対して謙虚さと優しさも見せたいですね。これは、いつも心がけてきたことです。



連載:AT WORK
音楽業界を牽引する人々の舞台裏に迫る、米ローリングストーン誌の連載「At Work(アット・ワーク)」
From Rolling Stone US

Translated by Shoko Natori

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