「音楽業界は現代の奴隷船」カニエ・ウェストの公開批判が無茶苦茶ではない3つの理由

2.法がカニエに味方するかもしれない(例:プリンス)

ここ最近のカニエ論争は、プリンスの一件と似ている部分がある。90年代中期、ワーナーブラザーズ・レコードからマスター音源を取り戻すことができなかった、あの一件だ。あの後プリンスは頬に「SLAVE(=奴隷)」と書くようになった。プリンスの件でしばしば見過ごされているのは、2014年に彼がこの戦いで勝利を収めた理由だ――最終的に彼は原盤権を手にし、その後ワーナーブラザーズに使用許可を与えるという形をとった。

2014年といえば、プリンスの傑作ソロデビューアルバム『プリンス』のリリースから35年目にあたる。アメリカ著作権法――1976年に制定され、1978年に施行された――の第203条によれば、レコーディングアーティストはレコードのリリースから35年経過後、特定の状況のもとで、著作権奪還の目的でレコード会社との契約解除を通知することができる。業界内のうわさによれば、ワーナーは厳しい選択を迫られたようだ。第203条をめぐってプリンスと裁判で争い、勝訴して――敗訴すれば音楽業界に危険な前例を作ることになるが――原盤権を保持するか、あるいは今このタイミングで手を結ぶか。同社は後者を選んだわけだ。

これがカニエにどう作用するか? 現在、アメリカの音楽業界を揺るがす第203条絡みの集団訴訟が2件持ち上がっている。訴えられたのはユニバーサル・ミュージック・グループと(原告団の代表はジョン・ウェイト)、ソニーミュージック(原告団の代表はニューヨーク・ドールズのメンバー、デヴィッド・ヨハンセン)。いずれの訴訟でも、原告団のミュージシャンの代理人を務める法律事務所Blank Romeは声明を発表し、第203条の35年ルールは「音楽業界のレコード会社にとって、予想される収入源に大きな痛手となることを意味する」と、鋭い警告を発した。

35年ルールにのっとれば、カニエが契約解除を提案してマスター音源の権利を手にするのは最短でも2039年(すなわち、『ザ・カレッジ・ドロップアウト』のリリースから35年後)ということになる。だが、彼の弁護団が総力を挙げてこの点を突けば、少なくともユニバーサルも聞く耳は持ってくれるだろう。

Translated by Akiko Kato

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