史上最高の「スポーツ映画」30選

14位『マーダーボール』(2005)


車いすに乗ったアスリートたちが戦いのスリルを通じて目標を見出していく姿を描いた『マーダーボール』は、観る人に元気を与えてくれるドキュメンタリーと呼ぶにふさわしい作品だ。だが、元は“マーダー(殺人)ボール”と呼ばれていた荒々しい車いすラグビーからタイトルをとった同作の優れた点は、感傷的なくだらない要素をすべて排除し、アメリカ代表チームとカナダ代表チームの熾烈なライバル関係を時系列順に描いていることだ。ヘンリー=アレックス・ルビンとダナ・アダム・シャピーロの両監督は、自らを現代のグラディエーターと称する屈強な選手たちにカメラを向ける。勝って(たくさん)セックスすることはもちろん、自らの人生を行きたいと願う彼らは、まさに戦士なのだ。もし同作がハリウッドの手に渡っていたなら、選手たちを鼓舞するスピーチや感動的なモンタージュ映像が散りばめられていたかもしれない。実際の『マーダーボール』は、当然のようにすべてを余すところなく映し出している。勝利と栄光、そして女の子たちのために車いすに乗って奮闘する勇敢な男たちの姿そのものなのだ。JM

13位『勝利への旅立ち』(1986)


ドラマチックなトーン? それとも複雑な感情表現? そんなものはどうでもいい。誰だって理屈抜きで感動したい時はあるのだから。そんな時にぴったりなのが『勝利への旅立ち』だ。観る人を爽快な気分にしてくれるこのスポーツ映画では、問題を抱えたコーチ(ジーン・ハックマン)が50年代の米インディアナ州の高校生たちに基礎に忠実であれと叩き込み、生涯最高のバスケをプレイするよう鼓舞する。テレビ映画の監督としてキャリアを積んだデビッド・アンスポーの長編映画デビュー作をノスタルジックすぎると非難するのは、お門違いだ。なぜなら『勝利への旅立ち』は、巨人ゴリアテを倒すにはダビデが精一杯努力をすれば十分だったように、過ぎし日の純真さに対する感動的で誇り高いオマージュなのだから。控えめながらも筋金入りの品の良さを醸し出すベテラン俳優ハックマンの完璧な演技が詰まった寓話的作品だ。TG

12位『打撃王』(1942)


一塁手でパワフルなヒッターでもあったヘンリー・ルイス・"ルー"・ゲーリッグ。ニューヨーク・ヤンキース屈指の選手のひとりであり、“鉄の馬”と称された彼の黄金期を描いた『打撃王』を観た世代は、ゲーリッグと聞けば同作でゲーリッグ役を演じたゲイリー・クーパーを思い浮かべる。スポーツ選手の伝記映画のほとんどがそうであるように、ゲーリッグの生涯、野球選手としてのキャリア、そして筋萎縮性側索硬化症(ALS、別名“ルー・ゲーリッグ病”)による死をたどる同作はひどくセンチメンタルだが、極めて感動的で、試合だけでなく選手本人を伝説化することに焦点を当てている。当然ながら同作には本物のベーブ・ルース、ボブ・ミューゼル、ビル・ディッキーといったピンストライプのユニフォームでお馴染みのヤンキースのチームメイトが数多く登場する一方、スポーツ史上もっともアイコニックな場面のひとつである背番号4の引退スピーチのクーパーによる再現シーンも収められている。どんな野球ファンも、ゲーリッグが自らを「世界でもっとも幸福な男」と語った瞬間を観れば号泣必須だ。DF

11位『ハードプレイ』(1992)


飛び交う悪口とスラムダンクを称える、一見騒々しい『ハードプレイ』。同作は、脚本と監督を手がけたロン・シェルトンが大人になりきれないバスケマニアたちの姿を愛情あふれる眼差しで明敏にとらえた作品だ。実生活でも仲の良いウッディ・ハレルソンとウェズリー・スナイプスという切れ味抜群のお笑いコンビのような2人が演じるのは、米カリフォルニア州のベニスビーチの金に困ったストリートボール選手。2人は地元の大会で優勝するため、しぶしぶコンビを組むのだ。公開から20年以上が経ったいまでも、ハレルソンとスナイプスの機敏な言葉選びとエネルギッシュなギブアンドゴー(訳注:ボールを持っている選手が味方にパスを出し、そのあとに走ってディフェンスを振りきってもう一度パスを受けること)は観ているだけで楽しい気分になる。こうした要素があるからこそ、『ハードプレイ』が醸し出す哀愁が際立つ——やがては大人の社会的責任が彼らのバスケの夢を奪ってしまうのだから。TG

Writers : KEITH PHIPPS & NOEL MURRAY & TIM GRIERSON & JAMES MONTGOMERY & BILGE EBIRI & DAVID FEAR / Translated by Shoko Natori

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