コロナで財政難が深刻化した米郵便公社、音楽業界でトラブル頻発

郵便物をめぐるトラブルが相次ぐ米音楽業界(Photo by Kristin Karch)


米中西部インディアナ州のSecretly Group——Secretly Canadian、Jagjaguwar、Dead Oceansなどのレコードレーベルを抱え、フィービー・ブリッジャーズが所属——で米マーケティングディレクターを務めるハンナ・カーレン氏は、ステイホームによってよりクリエイティブな販売経路を求める人々のおかげでSecretly GroupのD2C売り上げが伸びたと語った。USPSの問題が浮上すると、Secretly Groupは苦しい状況に立たされてしまった。注文が増える一方、配達の遅延や返金を求める声も増加したのだ。カーレン氏は、遅延はそこまでひどくはないものの、Secretly Groupは最悪の事態に備えていると言った。「いまはカスタマーサービスの規模をモニターし、D2Cフルフィルメント・センターから定期的に最新情報をもらうことで何とか対応しています」。

ステイホームによって注文が殺到するなか、Fat Possum Recordsも同じような状況にあった。Fat Possum Recordsは、倉庫がとくに忙しい時間帯に短期アルバイトを雇った。だが、そのひとりがPCR検査で陽性と判定されてしまった。気づくとアディソン氏は、予約商品がリリース前に確実に出荷されるよう、自ら作業に加わることで欠員を補充しようとしていた。「本当に、頭がおかしくなるかと思いました」とアディソン氏は言った。「私たちは、(1週間で)4000枚のアナログレコードを個人のお客様宛に発送しました。発売日には、何が何でもお客様の手元に届けたかったんです」。優先度の高いパンクバンドXのアルバムの発送作業が終わり、全従業員の陰性も確認されたいま、同レーベルは普段のリズムをいくらか取り戻した。

実験的DJのフライング・ロータスが設立したロサンゼルスの音楽レーベルBrainfeederのレーベルマネージャーを務めるアダム・ストーヴァー氏は、ロックダウンの初めの頃に受けた予約や注文は「サプライチェーンの問題のせいで対応が難しかった」と言い添えた。ストーヴァー氏は、これが「製造・梱包・フルフィルメントが停止し、フィジカル商品を販売するレコードショップが数カ月にわたって閉店に追い込まれ、倉庫の閉鎖によって小売店が注文に対応できない」状況が招いた結果だと語る。さらにストーヴァー氏は、AmazonがBrainfeederのアナログレコードとCDを販売しなかったことも指摘した。こうした商品は当時、非必需品とみなされていたのだ。

いまではサンダーキャット、カマシ・ワシントン、TOKiMONSTAといったアーティストと仕事をするBrainfeederのビジネスの復興の兆しが見えたのはおよそ3カ月前だとストーヴァー氏は語る。ちょうどその頃、Bandcampが週ごとに入会金無料キャンペーンを展開し、レコードショップの在庫がオンラインで売れはじめ、AmazonがアナログレコードとCDの販売を再開した。ストーヴァー氏は、ようやく商品をタイムリーに出荷できるようになったと言う。その一方、同氏はUSPSの状況を脱線事故にたとえる。「私たちは、現在の政治状況、長引くパンデミック、その結果として起こり得る音楽の消費方法の全体的な変化といった最悪の状態に向けて守りを固めています」と彼は説明した。「いまの気持ちを表現するなら、注意深くも楽観的といったところでしょうか」。

ニルヴァーナとサウンドガーデンの故郷としておなじみのワシントン州シアトルを拠点とするSub Popもさらなる問題に備える一方、解決策を生み出そうと努力している。Sub Popの顧客は複数の配送サービスから選択できるが、同レーベルはあえてUSPSを推奨している。それによってUSPSにより多くの資金が入るようにしたいと考えているのだ。こうしたインセンティブとして、Sub Popは先日オンライン注文の配送料無料キャンペーンを行った。「メディア・メールは音楽レーベルとファンにとっては天の恵のようなものです」と同レーベルのセールス部門責任者を務めるジョン・ストリックランド氏は本誌に語った。「いまでも多くのアナログレコードを販売・出荷しているインディーレーベルとして、Sub Popは注文を安く、効率的にファンに届けられるUSPSを頼りとしています」。

Translated by Shoko Natori

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