音楽イベントの充実化を図るフォートナイト、ライブシリーズをスタート

シンガー、ラッパー、ソングライターのドミニク・ファイクがフォートナイトでコンサートを開催することを発表した。

アーティストがアルバムを発売した際、いままではテレビ番組で楽曲を披露してきました。これは、それに似たものであると私たちは認識しています」とゲームにおける音楽の立ち位置についてフォートナイトの幹部は言った。

米現地時間9月8日、今年の初めにトラヴィス・スコットが“異次元レベル”と称賛されたライブを開催したことでおなじみの人気ビデオゲームのフォートナイトは、ゲーム空間を舞台とした「スポットライト」という新たなライブシリーズを9月にかけて配信すると発表した。その一番手となるのがシンガー、ラッパー、ソングライターのドミニク・ファイクだ。ファイクのライブは、現地時間9月12日の東部標準時17時(日本時間9月13日午前6時)から配信される。今後数週にわたり、フォートナイトは「スポットライト」でパフォーマンスを披露する予定のアーティストのラインナップを発表する。

コロムビア・レコードと契約している24歳のファイクは、先日デビュー作となるスタジオ・アルバムをリリースしたばかりだ。フォートナイトの舞台に立つアーティストとしては最年少で、もっとも目覚ましい成長ぶりを見せている。フォートナイトが音楽業界とのさらなる一体化を重視するなか、ファイクの参加は、ゲーム業界がスーパースターとのコラボレーションの次の段階に入ったことを示している。

「ステージは開かれていますと音楽業界に伝えたいですね」とフォートナイトの親会社である米エピックゲームズのグローバル・パートナーシップ部門の責任者を務めるネイト・ナンツァー氏は本誌に語った。「私たちの取り組みに賛同し、やがては素晴らしいコラボレーターになってくれる優れたパートナーを探しています。マシュメロ、トラヴィス・スコット、ディプロなど、私たちがいままで行ってきたすべての音楽関連イベントは、アーティストとの徹底したコラボレーションによるものであり、私たちはそうした取り組みを今後も続けていきます」。

フォートナイトは、音楽ビジネスの予期せぬ寵児となった。新型コロナウイルスの感染拡大がライブ・エンターテイメント業界の再始動を阻むなか、フォートナイトはアーティストのためにデジタルという新しいインタラクティブなチャンスを積極的に追求してきた。そのなかでもフォートナイト史上もっとも有名なライブ配信イベントのひとつは、“異次元レベル”と称賛されたトラヴィス・スコットのシングル「ザ・スコッツ」のプロモーションイベントだ。数百万人がこのイベントを視聴し、ラッパーのキッド・カディを迎えた「ザ・スコッツ」を音楽チャート初登場1位へと押し上げるのに大きく貢献した。昨年はマシュメロもゲームモード「パーティーロイヤル」のローンチを記念してスコットのようなライブを開催。フォートナイトは、ディロン・フランシス、スティーヴ・アオキ、Deadmau5をフィーチャーしたライブも過去に開催している。

ゲーム空間におけるライブコンサートの人気が裏付けられるなか、フォートナイトは話題目当ての1回限りのものではなく、新作リリースの際にアーティストが深夜番組で行ってきた従来のプロモーション活動のようなフル装備のマーケティングサービスを開発しているとナンツァー氏は語る。今回発表された「スポットライト」というフォーマットは、音楽とゲームの両方にファンを持つメジャーなアーティストではなく、さまざまなジャンルやアーティストで実験する機会となる。

「こうしたイベントの驚くべきエンゲージメントを実感しました。なかには、ずっと視聴を続けてくれる人もいました。そこで、これを次のステップに昇華できると思ったんです。一部のコロナ規制が緩和され、いまではスタジオに行くことができるようになったおかげで、この2カ月はこの計画を発展させる方法を練っていました。ここロサンゼルスのスタジオから高品質なライブイベントが配信されるでしょう」とナンツァー氏は語った。

「アーティストがアルバムを発売した際、いままでは『ザ・トゥナイト・ショー・スターリング・ジミー・ファロン』や『サタデー・ナイト・ライブ』のようなテレビ番組で楽曲を披露しました。これは、それに似たものであると私たちは認識しています。」とナンツァー氏は言い添えた。「フォートナイトのプラットフォームは鉄板と呼べるもので、私はここをアーティストのお披露目の場にしたいのです。これは、アーティストにとっても大きなメリットがあります。その一方、私たちは魅力的なソーシャル体験をファンの皆様に提供できます。ただトップ40を紹介するのではなく、もっと広めていきたいのです。私たちが求めているのは、ビッグな新興アーティストです」。

ライブストリーミング全般は、メインストリームから外れた物珍しいコンセプトから音楽業界においてもっとも重要なマーケティングおよびパフォーミングコンセプトのひとつへと瞬く間に急成長した。パンデミックが続き、アーティストのスマホの自撮りによる質の低いホーム・コンサート動画に視聴者がうんざりするにつれ、アーティストは試験的に高品質なプレミアム・ストリーミングサービスを試みるようになった。NoonChorusのようなスタンダードなチケット制ライブストリーミングを行うプラットフォームを利用するアーティストがいる一方、さらなる没入型体験を求めてフォートナイト、さらにはWaveやMelodyVRといった没入型VR体験を利用する者もいる。

多くのライブストリーミング・プラットフォームが主張するように、ライブストリーミングにさらなるバリューをもたらすための鍵は、可能な限りの対話性(インタラクティビティ)を提供することだ。フォートナイトの場合、これはキャラクターのカスタマイゼーションとユーザー仲間同士のインタラクションにある。

アニメーション・スタイルのコンサートがより一般的になるにつれ、新鮮味が薄れるのではないかと一部の評論家は危惧しているが、ナンツァー氏は心配していない。

「仮に、私が友人たちと従来のライブストリーミングを一緒に観るとしましょう。やりとりはショートメッセージ形式のチャットだけです。これは、フォートナイトのイベントとはまったく異なる体験です。フォートナイトでは自分の音声で会話し、一緒にダンスも踊れます」とナンツァー氏は言う。「つながりのレベルがまるで違うのです」。

・VRはコロナ時代のコンサートの新形態となり得るか?

Translated by Shoko Natori

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