アーティストが稼げる音楽ストリーミングサービスとは? 米パンドラの創業者が語る

2016年12月6日、壇上でスピーチを行う米パンドラの元CEO、ティム・ウェスターグレン氏(Photo by Theo Wargo/Getty Images)

インターネットラジオサービスを提供する米パンドラの創業者のひとりであるティム・ウェスターグレン氏が立ち上げたSessionsという新しい音楽ストリーミングサービスは、アーティストのために今後半年以内にSNSプラットフォームと広告ネットワークを通じて10億回のインプレッション数達成を目指すと約束した。

ここ最近は、掃いて捨てるほどのライブストリーミング・プラットフォームが存在する。それらの多くは、VRビジュアル、ゲーム形式のインターフェース、ジオフェンス(訳注:GPSやWi-Fiによる位置情報を使った仕組みのひとつで、仮想的な地理的境界線のこと)を使った“ローカルな”イベントといった華やかなサービスをユーザーに提供してきた。だがティム・ウェスターグレン氏は、これらすべては問題の半分にすぎないと考えている。

「誰かに観てもらえなければ、ライブストリーミングなんて無意味です」とインターネットラジオサービスを提供する米パンドラに20年勤務したウェスターグレン氏は本誌に語った。「(ライブストリーミングの)オーディエンスはわずかで、収益も低い。ミュージシャンにとって最高の新しいビジネスの形であるべきなのに、マーケティングと収益が欠けているのです」。

ここでSessionsを紹介しよう。Sessionsとは、ウェスターグレン氏が今年の4月に立ち上げた新しい音楽ストリーミングプラットフォームだ。同プラットフォームを利用するアーティストは、コンテンツを生配信することでチケットの売上やマイクロペイメント(訳注:少額の決済が手数料なしでできるシステム)によるライブ内課金から相当な利益が得られるだけでなく、ウェスターグレン氏の会社は自らの資金を投じてこうしたアーティストのマーケティングやプロモーション活動を行うため、Sessionsは2つの解決策をアーティストに提供することになる。ひとりのアーティストがSessionsに加入するごとに同社はアーティストと直接パートナーシップを結び、ファン層の拡大を図る。「ファン層が広ければ広いほど、マーケティングに使う金額は多くなります」とウェスターグレン氏は言う。現在Sessionsは、アーティストのために今後半年以内にSNSプラットフォームと広告ネットワークを通じて10億回のインプレッション数(訳注:広告の表示回数)達成を目指すという目標を掲げる一方、コロナ禍でアーティストのマーケティング活動に積極的に投資している唯一のライブ・エンターテイメント会社を自称する。


Sessions

アーティストの持続的な収入源になるというSessionsの主なミッションは、ウェスターグレン氏にとって私的なものでもある。同氏は共同創設者のひとりとして2000年にパンドラを立ち上げ、数年にわたって同社のCEOを務めた。広告サポートとサブスクリプションがベースのビジネスモデルを前提としたストリーミング・プラットフォームを実現しようとパンドラがもがき続けるなか、ウェスターグレン氏は2017に同社を退社。退社後のインタビューでは、ライバルとなる新興の音楽ストリーミングサービスが登場するなかで自らの道を失ってしまったパンドラに対する苛立ちを語り、「傷ついた心」と「やり残した感覚」を抱いたまま退社したことを明かした。

・Apple Musicが「ラジオ」にこだわり続ける理由

Translated by Shoko Natori

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