1970年代、音楽の舞台で再び活躍したエルヴィス・プレスリーを辿る



「See See Riders」はアニマルズで有名ですね。デトロイトのミッチー・ライダーという方がこのメドレーを得意としておりました。「The Wonder of You」は、アルバムに先駆けて発売されたシングルで、この曲も1959年にレイ・ピーターソンという人がヒットさせてる曲ですね。オリジナルはとても甘いラブソングなのに、こういうスケールの大きな曲に生まれ変わっている。先ほどお聴き頂いた「Suspicious Minds」は、1969年のメンフィスでのレコーディングで生まれた曲です。エルヴィスの研究家の間では、伝説のメンフィス・セッションと呼ばれているんだそうです。1969年、エルヴィスは生まれ故郷のメンフィスに帰ってレコーディングをしていた。しかも、その前にはTVスペシャルで音楽に帰ってきた。どうやって1970年代を迎えようとしていたのかが、改めて推測できるエピソードだなと思いました。今回のエルヴィスの1970年代のことを、『The Essential 70’s Masters』というボックスセットで色々知ったのですが、萩原健太さんがそちらで克明な解説を書いておりました。この伝説のメンフィス・セッションというのは、エルヴィス・プレスリーがどういう音楽をもう一度やるのかということで集まったミュージシャンたちとレコーディングしたそうです。ブルース、カントリー、ゴスペルもあり、大袈裟な言い方をすると、エルヴィスとはなんなのか? というのが改めて確認された。彼は1970年代を迎えたんだなあというのはとても感慨深かったです。そういう彼のあらゆるジャンルを飲み込んだ歌のスケールやエネルギーが形になったのが、『エルヴィス・オン・ステージ』でもあります。その中から2曲をお聴きください。





1970年代のエルヴィスと1960年代のエルヴィスの違いは、人の歌をたくさん歌ったことでしょうね。1960年代は映画主題歌や、映画の中のオリジナル楽曲が多かったのですが、1970年代は他のアーティストの歌をたくさん歌っております。「Polk Salad Annie」は、1968年にスワンプ・ロックのシンガー・ソングライターであるトニー・ジョー・ホワイトが全米8位にランクインさせたヒット曲。1968年ですから出来立てホヤホヤの楽曲なんですが、それをエルヴィス は自分の曲にしてしまった。そして、「Proud Mary」は言わずと知れたCCR(クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル)、南部色の強いロックバンドです。エルヴィスは俺が歌う歌だと思ったんでしょうね。エルヴィス流になっております。

Rolling Stone Japan 編集部

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