2006年没のJ・ディラ、『Donuts』収録曲が無許可サンプリングで訴えられる

J・ディラ『Donuts』ジャケット

J・ディラの『Donuts』に収録された「Workinonit」は近年再リリースされ、Netflixにもライセンスされた曲だが、10ccの「ワースト・バンド・イン・ザ・ワールド」を無許可でサンプルしたとして訴えられている。

2020年、続発する著作権をめぐる訴訟の数々はもっと奇妙なことになってきている。最新の音楽関係の権利に関する法的闘争では、J・ディラの『Donuts』――このアルバムは2006年、このヒップホップ・アーティストが亡くなる3日前にリリースされた――に関わったレコード会社と出版社に残された猶予は次の水曜日まで。とあるロック・アンセムを無許可でサンプリングしたとする法的な訴えに応じなければならないのだ。

●【動画を見る】J・ディラ「Workinonit」と10cc「ワースト・バンド・イン・ザ・ワールド」

2020年の3月に提出され、4月に修正された訴状によると、J・ディラのアルバムはジェイムス・ブラウン、ディオンヌ・ワーウィック、ランDMC、ビースティ・ボーイズ、そして10ccといったさまざまな音楽を合法的にサンプリングしている――が、「Workinonit」において、1974年のアルバム『シート・ミュージック』に収録された10ccの「ザ・ワースト・バンド・イン・ザ・ワールド」を、無許可でサンプリングしているのだという。

この訴訟の原告は、ミュージック・セールス・コーポレーション。ニューヨークを拠点とする企業で、長年この曲の所有者であった音楽出版のマンケン・ミュージック社と2019年に排他的な管理契約を結んで以来、「ザ・ワースト・バンド・イン・ザ・ワールド」の権利を管理してきた。原告の主張によれば、J・ディラはどのような形態であれこの楽曲を使用する許諾を得ていないし、得ようとしてもいない――被告に名を連ねる者も誰一人許諾を得ていないのだという。被告には、ユニバーサル・ミュージック、E.P.H.C.Y.パブリッシング、そしてレーベルのストーンズ・スロウ・レコードが含まれる。

『Donuts』はボックスセットとして2013年に、カセットとして2014年に再リリースされている。訴状によれば、ミュージック・セールス・コーポレーションがマンケンと提携する以前から、原告の先任者は2014年前後、被告となった三者に対して権利侵害の懸念を伝えていたという。こうした情報を伝えられていたにも関わらず、ストーンズ・スロウは2016年に『Donuts』の10周年記念盤をリリースした。

その後、ユニバーサルとE.P.H.C.Y.パブリッシングはさらに、Netflixへ「Workinonit」の使用許諾を出している。デイヴ・シャペルの番組「パート1:デタラメだらけの時代」と「パート2:テキサスと言えば」での使用で、どちらも2017年に公開されて以来、同プラットフォームのコメディ番組のなかでは大きな人気を誇ってきた。これらの番組から抜粋された音声はその後、2017年のグラミー賞で最優秀コメディアルバム賞を受賞している。

ミュージック・セールス・コーポレーションいわく、被告の 「意図的であり、故意の、悪質で抑圧的な」行為に対して、同社は保証的損害賠償を求める権利があるという――さらに、被告が少なくともこの3年間に得た利益も請求し、弁護士への支払いや訴訟に関連する費用の保証も求めるとも。

ユニバーサルとストーンズ・スロウの代表者はローリングストーン誌の問い合わせにすぐには応じていない。J・ディラは2006年にロサンゼルスの自宅で亡くなったが、死後も親族を通じて作品をリリースしてきている。


From Rolling Stone US.

Translated by imdkm

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