ローリング・ストーンズの卓越した先進性とは? 今の視点で捉え直す『山羊の頭のスープ』

ザ・ローリング・ストーンズ(Photo by Hipgnosis)


先鋭的なブラック・ミュージックとの共振

魅力その2。ジャマイカ録音というロケーション上の要素や上述のような「第三世界的」色付けにも関わらず、具体的な音楽的特徴としてまず耳を惹くのが、そのソウル・ミュージックっぽさだろう。もちろん、ストーンズといえばデビュー以来様々なブラック・ミュージック要素を取り入れて自らの血肉としてきた人たちなので、ソウルの要素がある、といっても特段驚くに値しないかもしれないが、今作に置いては、それまで彼らが主に参照先としてきたブルーズやリズム・アンド・ブルースの範疇を越えて、同時代のいわゆるニュー・ソウル的要素をかなり取り入れているのだ。

具体的には「ドゥー・ドゥー・ドゥー…(ハートブレイカー)」などにおけるパーカッションを伴った16ビートのニュアンス、ワウをきかせたギター、コーラスのリフレイン、キレのいいホーン・セクションの林立…などを挙げることができるだろう。この曲は、ストーンズともなにかと縁の深いソウル・シンガー/ギタリストのボビー・ウーマックの同時期作品に通じる洗練されたニュー・ソウル的スリルが横溢しているように思う(ボビー・ウーマックの名曲「Across 110th Street」と是非聴き比べてほしい)。そういう意味で、この時期バンドと蜜月関係にあった本物のソウル・ミュージシャンたるビリー・プレストンが、本曲をはじめとしてクラヴィネット等で大活躍しているのも見逃せない。




また、上述の「ダンシング・ウィズ・ミスターD」にしても、チャーリー・ワッツら(この曲ではミック・テイラーがベースを弾いている)リズム・セクションを取り出してみると、同時代のアル・グリーン等のモダンなメンフィス・サウンド=ハイ・サウンドを彷彿させたりもする。いつの時代でも、ポップ・ミュージック(特にロック)にとって先鋭的なブラック・ミュージックは大きなインスピレーションで有り続けており、今現在もそこからの感化と習合はあらゆる場面で進行しているといえるが、ストーンズこそが常にその運動のもっとも良質な一例を担ってきたということが、こうした例からもはっきりとわかるのだ。

さらに、「ウィンター」(隠れ名曲!)については、メロウとすらいえる領域に立ち入っているように思う(この路線が後に「ブラック・アンド・ブルー」(1976年)などで一層花開くわけだが、ここでは導入期であるがゆえのフレッシュさがある)。この曲は、どちらかというとアフロ・アメリカンによるソウルというよりは、アイリッシュ・ソウル=ヴァン・モリソンの世界のようでもあり、改めてミック・ジャガーが優れたホワイト・ソウル・シンガーであることを知らしめている(ニッキー・ホプキンスのリリカルなピアノも素晴らしい)。

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